スペインのバレンシア州で、2015年6月に新たな州政権が誕生した。Ximo Puig州首相が率いるこの新政権は、高コストと農産物の低品質にあえぐ農業部門への対策として、農地の灌漑に淡水化による脱塩水の使用を奨励しようとしている。
この検討についてXimo Puigバレンシア州首相はこう述べている。「われわれは、淡水化による水資源の利用を現在よりも大幅に最適化しなければならないし、また、それをできるだけ早期に成し遂げなければならない。そうすることでコストが削減されるのは、ほぼ確実だ。われわれはそのために未来へ向けた投資をおこなっており、だからこそ、この投資が確実に大きな効果をもたらすようにしなければならない」
この脱塩水の農業利用で大きな役割を期待されているのが、ヨーロッパ最大のトレビエハ淡水化プラントを含むいくつかの淡水化施設である。トレビエハの淡水化プラントは、建設は完了しているものの、運転コストなどの問題から、現在、試運転の途中で止まったままになっている。
農業の発展を阻む水の高価格と入手の困難さ
バレンシア州内には、水の価格と入手の困難さが農民の受容限度を超えているというただそれだけの理由で、耕作に利用できるにもかかわらず利用されていない土地がたくさんある。こうした耕作放棄地を再生させようと、州政府は2014年のおわりに中央政府にはたらきかけて、州内にいくつかある淡水化プラントを国の水供給システムに組み入れてもらおうとした。こうすることで淡水化のコストが全国に分散され、地元の農民が受け容れやすい水価格になると考えたのである。
トレビエハ淡水化プラントは、タホ川とセグラ川の流域の灌漑の強化などのために3億3000万ドル(約400億円)をかけて建設された。フル稼働すれば44万人分の飲用水需要を満たす処理能力がある。しかし、実際に淡水化処理を開始するのは2016年はじめの予定で、しかも本来の処理能力の半分で稼働することになっている。