英国飲料水検査局、私営水道の13%が飲料水安全基準を満たさず

英国環境省の飲料水検査局(DWI)が2015年7月9日に発行した2014年次報告書「イングランドの飲料水の品質(Drinking water quality in England)」*1によると、イングランドの数多くの私営水道(private water supplies)*2が汚染されている決定的な証拠が見つかった。DWIによると、私営水道に対する規制当局の介入を厳しくせざるをえない。

報告書では次の点を指摘している。

(1)  イングランドでは、3万7000軒以上が私営水道で飲料水を賄っている。このうち5,840軒が50人以上の人々向けか、あるいは商業活動や公的活動で使われている。それ以外は、一軒家(2万5231軒)と共有住宅(6,474軒)で使われている。

(2)  一般住民向けの私営水道に対し、地元当局やDWIがより厳しい検査を行っている。2014年には、その69%がリスク評価を完了している。その際、地元当局の公衆安全衛生専門家がサンプル調査を行った。

(3)  一般住民向けの私営水道8,054軒分のサンプル調査を実施したところ、そのうち7.8%が大腸菌の安全基準を満たしていないことがわかった。ところが、サンプル検査の件数が少ない小規模な集合住宅の場合、大腸菌基準の不合格率は23%にのぼった。私有飲料水に大腸菌が検出されたことは、鳥類、動物または人間の糞便が水道に混じりこんでいることを証明している。直接に病気を招く高いリスクが私営水道にある。

(4)  全体として、私営水道の13%以上が腸球菌検査に不合格であり、大腸菌検査についても同様の割合で不合格であった。それ以外の不合格率は高い順から、鉛、硝酸、マンガン、クロストリジウム、鉄であった(下図)。

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図 検査項目毎の不合格率
(出典:Drinking water quality in England)

(5)  以上のような証拠は決定的であり、国民の健康リスクを緩和するため規制当局が介入する根拠を著しく強めるものである。

(6)  一方、イングランドとウェールズの公共水道(民間の水会社等が運営管理し、公共上下水道に接続している飲料水)は、世界最高水準の品質を維持し続けている。DWIが実施した検査で法定基準を満たさなかった水道は、イングランドでわずか0.04%、ウェールズで0.02%にすぎなかった。

(7)  イングランドでは2014年に488件の報告汚染事象が発生した。そのうち220件は「重要」事象と評価されるリスクで、DWIの独立調査を必要とした。独立調査された事案のうち、12件は「深刻」事象であり、さらなる措置が必要であった。

*1 http://dwi.defra.gov.uk/about/annual-report/2014/sum-eng.pdf

*2 公共の上下水道に接続せず、所有者や利用者の責任で管理されている飲料水(人口の約1%)のことをいう。

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