GCC諸国、淡水化能力を2020年までに40%増へ――MEED Projectsの予測データ

国際水サミット事務局がこのほど公表した最新の予測データによると、中東の湾岸協力会議(GCC)諸国は、この地域で増大をつづける水需要を満たすために、海水淡水化の能力を2020年までに地域全体で40%近く増強することになるという。この予測データは、中東地域のプロジェクト情報のオンライン・サービスを提供している大手情報企業、MEED Projectsが算出したもので、それによると、GCC諸国の現在の海水淡水化能力は日量およそ40億英ガロンだが、飲用水供給能力の増強のための巨額の投資が見込まれ、向こう5年間で日量55億英ガロンを超えるまでになるという。これは、海水淡水化能力のおよそ40%の増加に相当する。なお、GCC国別の海水淡水化量は下図の通りである。2019年には、UAEとサウジアラビアのそれぞれが15億英ガロン/日を超えると見込まれている。

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図 GCC諸国での海水淡水化量の予測(単位:百万英ガロン/日)
(出典:JETRO、湾岸協力会議(GCC)加盟国における水事業(海水淡水化、給水、廃水処理)に関する調査報告書)

経済成長や地下水激減で重要性を増す淡水化

着実な経済成長と人口増がつづいているアラブ首長国連邦やカタールのような国では、水需要が急増し、淡水化の重要性が増している。また、サウジアラビアでは地下水の供給量が激減しており、これも淡水化がますます重要になる要因となっている。MEED ProjectsのEdward Jamesコンテンツ・分析部長は、こうしたことからこの地域では新たな水資源の必要性がますます高まってきていると言う。

現在、この地域の飲用水需要は日量およそ33億英ガロンだが、これが2020年には日量およそ52億英ガロンになると考えられている。また、現在は水の供給が需要を大幅に上回っているように見えるが、国レベルや地方レベルで見ると、供給と需要の差、すなわち供給予備率がずっと小さなところもある。たとえば、カタールとアラブ首長国連邦の供給予備率はここ数年じゅうぶんな水準を保ってきたが、サウジアラビア、オマーン、およびクウェートは、特に夏の数ヵ月間の需要をいかにして満たすかという問題に直面してきた。加えて、老朽化しつつある造水プラントはつねにフル稼働できるとはかぎらず、これが造水能力をさらに低下させている。

需要抑制と、巨額投資による造水能力増強

前出のJames部長はこう述べている。「石油の収入が減り、しかも水の問題が政治的な重要課題になるにつれて、各国政府は、水の需要を抑制して設備投資と運営コストを減らす方向で動いてきた。たとえば、アブダビは2015年になってから、経費節減と水需要低減のための取組の一環として、初めて住民から水道料金の徴収をはじめるとともに、これまでも徴収してきた外国人居住者向けの水道料金を値上げした。これは、ドバイが2010年に水道料金を値上げしたことに倣った動きで、ドバイでは料金値上げの結果、水需要の伸びが年率10%から4%にまで低下している」

James部長はさらにこう言う。「われわれのデータによれば、この10年間にGCC諸国全体で単体の水プロジェクトに760億ドル(約9兆2000億円)が投じられてきた。これら淡水化施設への投資に、それに付随する発電設備への投資を加えると、その額は1000億ドル(約12兆円)を優に超える。今後は、短期的に見て最も急激な水の需要量が見込まれるサウジアラビア、アブダビ、オマーン、それにクウェートに、最大の投資がおこなわれるとわれわれは考えている。淡水化能力を日量15億英ガロンを超えて増やすには、やはりこれまでに匹敵する巨額の投資が必要になるだろう」

James部長はまた、こうした投資の多くは、エネルギー集約度の低い淡水化技術の開発に向かうだろうと述べた。

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