膜分離活性汚泥法(MBR)は1960年代にアメリカで開発され、従来法に比べて小型で、処理水の水質がよいといった特長がある。数十年の発展を経て、MBR技術はすでに世界中で最も競争力の高い汚水処理と再生水利用技術のひとつとなっている。中国でMBRがはじめて導入されたのは、2005年の北京密雲再生水場プロジェクトである。同プロジェクトは北京碧水源が設計・建設を行ったもので、中国国内におけるMBR普及の始まりとみられる。この10年間でMBR技術は大きく発展し、特に碧水源をはじめとする中国企業が大いに躍進し、世界トップクラスの技術力を持つ企業に成長してきた。
高性能の分離膜がMBRのコアとなる材料である。膜の作製方法として、FS-NIPS、非溶媒誘起相分離法(NIPS:Nonsolvent Induced Phase Separation)、熱誘起相分離法(TIPS:Thermally Induced Phase Separation)などがある。うち、FS-NIPS技術のハードルが最も高く、限られた企業しかそのノウハウを持っていない。
MBRに使用する膜には次のような要件が求められる;
- 高強度。処理水の水質を確保し、膜自身の寿命を保つ
- 高いフラックス。処理水の水量を確保し、敷地面積を削減する
- 良好な親水性、耐汚染性能と運営の安定性
- 保存しやすい、運輸に便利である
中国におけるMBR市場の現状
中国国内でのMBRに関する主なメーカーとして、GE、三菱レイヨン、旭化成、北京碧水源、中信Memstar、天津膜天、開創環保などが挙げられる。うち、碧水源はFS-NIPS技術を利用してMBR用膜材料を独自に開発した。当該膜材料は高強度、高い通過流束、寿命が長いという特長があり、世界トップレベルと称される。現在、碧水源はMBR用膜材料の生産能力が600万m2/年に達している。
表 各社のMBR概要
(出典:北极星节能环保网より引用)
グローバル メインプレーヤー |
膜の作成方法 | 平均フラックス (m3/(m2・d)) |
強度 (N) |
耐久年数 (年) |
---|---|---|---|---|
北京碧水源 | FS-NIPS | 0.45 | >200 | 5~8 |
三菱レイヨン | FS-NIPS | 0.45 | >200 | 5~8 |
GE | FS-NIPS | 0.45 | >200 | 5~8 |
旭化成 | TIPS | 0.30 | 5~10 | 1~3 |
中信Memstar | TIPS | 0.24 | 4~5 | 1~3 |
天津膜天 | NIPS | 0.24 | 4~5 | 1~3 |
中国におけるMBRの累計処理容量と設備数は下図の通りで、近年急速に普及しつつあることが分かる(下図)。
図 中国におけるMBRの累計処理容量と設備数
(出典:北极星节能环保网より引用)
特に碧水源は中国でのメインプレーヤーであり、近年MBRプロジェクトの件数を大幅に伸ばし、その処理容量は500万トン/日、市場シェアは70%を超えている(下図)。また、MBR専門サイト*1によると、世界全体での規模が10万トン/日以上の大型MBRプロジェクトの件数を見た場合、碧水源が24件でトップで、2位のGE社は17件となっている。
図 中国における北京碧水源のMBR累計処理容量と設備数
(出典:北极星节能环保网より引用)
図 中国におけるMBR市場の企業別シェア(単位:%)
(出典:北极星节能环保网より引用)
水不足に加え、水質汚染が深刻さを増している中国だが、これら2つの問題を解決する手段として、処理水を再利用できる高度な水処理技術であるMBRの商機が拡大するとの期待は大きい。現在、中国の京津冀、太湖流域、滇池流域、珠江デルタ地域など広く応用されている。