米国カリフォルニア州オークランドに拠点を構える水分野シンクタンクのPacific Instituteは2016年10月13日、「カリフォルニア州における水供給及び水効率利用の代替手法コスト(The Cost of Alternative Water Supply and Efficiency Options in California)[1]」と題した報告書を公表した。同報告書では、都市地域における水供給の拡大と水需要の低減を目的として、州全体に適用される様々な造水促進対策及び節水対策の実施コストを比較、分析した。
同報告書は、雨水回収・再利用、海水淡水化、間接飲用水利用などの様々な造水促進対策と、ランドスケープ(造園)の変更、節水型家庭用トイレやシャワー蛇口の設置といった複数の節水対策を実施した際に生ずるコストをそれぞれ比較した(下図)。造水促進対策では、実施される手法に応じて造水コストが大きく変動することが明らかとなった。大規模な雨水回収・再利用による造水コストは、1エーカー・フィート当たり平均約590ドル(約6万1581円)と、他の手法と比較して最も低廉である。これに対して、大規模な海水淡水化に伴う造水コストは平均同2100ドル(約21万9188円)、小規模プロジェクトでは同2800ドル(約29万2250円)と最も高額である(下表)。
図 節水コストと造水コストの比較
(出典:The Cost of Alternative Water Supply and Efficiency Options in California)
表 海水淡水化の総コスト
(出典:The Cost of Alternative Water Supply and Efficiency Options in California)
サンプル数 | 海水淡水化の総コスト(ドル/AF) | |||
---|---|---|---|---|
Low | Median | High | ||
大規模プロジェクト | 3 | 2100 | 2100 | 2500 |
小規模プロジェクト | 5 | 2700 | 2800 | 4300 |
また、間接飲用再利用(indirect potable reuse)と非飲用水再利用(non-potable reuse)とを比較した場合、非飲用水再利用は、再生水を灌漑や飲用以外の目的で再利用するため、処理コストは間接飲用再利用と比較して安価である。しかし、非飲用水を供給する配管を水道管とは別に整備、拡張するコストが発生することから、結果として間接飲用水再利用の方がよりコスト効率性が良くなる可能性がある。
一方、今回の報告書では、現行及び将来の水需要を満たすため、水供給の確保を目的とした造水促進対策よりも、水保全や水の効率利用といった節水対策の方が、コスト効率性が良いことが明らかになった。一般住宅または商工業施設を対象とした節水対策は、水消費量の継続低減につながるため、節水対策の実施に伴うコストよりも将来に亘り削減される水の使用コストの方が大きくなる。
水不足が深刻化するカリフォルニア州では、どの手法がコスト効率性が最も良いかは地域の状況に応じて異なる。しかし、同報告書は、水不足の解決に費用効率が高く持続可能な手法を優先順位付け、連邦・州政府や地方自治体が特定の手法への投資を行う判断材料として活用することが可能となる。
※1ドル約104.375円で換算
[1] http://pacinst.org/app/uploads/2016/10/PI_TheCostofAlternativeWaterSupplyEfficiencyOptionsinCA.pdf