Suez Environmentは2017年3月8日、カナダの大手年金基金であるケベック州貯蓄投資公庫(CDPQ:Caisse de depot et placement du Quebec)と共同で、GE水処理事業を買収すると発表した。買収額は32億ユーロ(約3931億円)に上る。両社の事業統合を通じて、Suezは世界的な水処理事業の先駆的な企業へと君臨し、長期的な利益拡大や自社株主への価値向上を目指す。
GE水処理事業は、2016年時点における収益が21億ドル(約2411億円)に達し、7500名の従業員を抱える世界有数の企業である。世界130か国で事業を展開しており、収益の半分を北米市場で占めている。一方、Suezは、世界各地で水・廃水処理サービスを提供しており、従業員数は総数で82000名を超えるほか、2016年時点の収益は153億ユーロ(約1兆8796億円)に達する。Suezは、今回のGE水処理事業の買収を通じて、飲食料品、石油・ガス、電力、採掘、薬品、マイクロエレクトロニクスなど、世界の様々な産業セクタを対象として事業を拡大するほか、Exxon-Mobil、Total、Shell、BASF、Nestle、Cargill、Intel、Samsung、Pfizerなどの一流企業を自社顧客に抱える。世界の産業水処理市場規模は合計950億ユーロ(約11兆6705億円)に達し、環境規制の整備拡大やコスト効率性が高い環境・経済的手法の導入ニーズの拡大を通じて、年間5%の市場成長が見込まれている。SuezのCEOを務めるJean-Louis Chaussade氏によると、同社がこれまで主力事業としてきた地方自治体を対象とした水処理市場と比較して、産業水処理市場は世界の水消費量の15~20%を占めるなど、重要な位置づけにあるとしている。Suezが発表した資料によると、産業水処理市場における主要プレーヤーの売上は下図の通りである。今回のGE水事業の買収によってSuezは、市場における上位グループに入り込んだと言える。
図 産業水処理市場における主要プレーヤーの売上(単位:10億ユーロ)
(出典:Suezプレスリリースより引用)
GE水処理事業は、既存のSuez産業用水処理事業へ統合され、Suez事業として運営される。合併後のSuez水処理事業の従業員数は1万人規模へ拡大する。Suezは、GE水処理事業の強みを生かして、主な買収効果を以下のとおり掲げている。
- 市場開拓能力や販売力が大幅に拡充することで、多様な産業顧客へアクセスする機会が向上する
- これまでSuezが事業展開に積極的でなかった、米国や新興国を中心とした地域をサービスエリアとして拡大する
- 世界各地におけるR&Dセンター網の確立、様々な特許技術の獲得と最新デジタルプラットフォーム「InSight」の提供を通じて、革新的なソリューションを開発する能力が向上する
- 買収統合によるシナジー効果を通じて、大規模なコスト削減と収益増加が見込まれる。今後5年間で運用コストを削減し、EBITDA[1]が6500万ユーロ(約79億8511万円)増加する。また、シナジー効果により年間2億ユーロ(約246億円)の収益拡大を見込んでいる。
- 買収後1年目以降、1株当たりの利益(EPS[2])とキャッシュフローが増加するなど、Suez株主に対する価値が向上する。
GE水処理事業は、2016年10月に売却の方針が発表され、その後数回にわたりオークション(競売)が開始された。SuezのChaussade氏によると、GE水処理事業の買収を巡り、3回目及び4回目の競売では、米エクリティファンドであるClayton, Dubilier & Riceが入札したという。Suez、及びCDPQは、GE水処理事業が抱える株式や負債などの全資産を全て現金にて買収する。Suezが買収額の70%、CDPQが30%を負担する。
SuezによるGE水処理事業の買収は、欧州委員会(EU)や米国などの規制当局の承認を今後得る必要があり、2017年中盤の買収完了を見込んでいる。Suezは、欧州従業員代表委員会(European Works Council)からの意見収集に向けて、今回の買収計画を既に提出している。
買収後のSuezの組織図は以下の通りで、産業水処理部門については、SuezとCDPQが合同で別会社を作り管理されていく。
図 GE水事業買収後のSuezの組織体制
(出典:Suezプレスリリースより引用)
[1] EBITDAとはEarnings Before Interest, Taxed, Depreciation and Amortizationの略。利払い・税引き・償却前利益を指す。
[2] EPSとはEarnings Per Shareを指す。