米国の水インフラ産業への投資、雇用と経済効果を創出

ワシントンDCに拠点を構える水道業界団体US Water Allianceの下部組織Value of Water Campaignは2017年3月22日、米国の水インフラ産業への投資による経済効果を分析した報告書“The Economic Benefits of Investing in Water Infrastructure[1]”を発表した。同報告書によると、水インフラ産業への国内投資は、年間130万件に上る雇用と2200億ドル(約2兆4427億円)の経済効果をもたらす。

米国における上下水道インフラの多くは使用年数が100年を超えており、老朽化が深刻な課題である。上下水道管、ポンプ、浄水・廃水処理施設などのインフラは、目標耐用年数に到達しており、水インフラを更新する資金需要が急速に高まりつつある。しかし、連邦政府による水インフラ支出額は過去大幅に低下しており、インフラ投資額全体に占める水インフラへの支出額の割合は1977年時点で63%に達していたものの、2014年には同9%まで下落した。米国土木学会(ASCE:American Society of Civil Engineers)は、水インフラを更新するためには、今後10年間で年間820億ドル(約91046億円)に上る連邦政府の追加投資が必要であると積算している。必要投資額と実際の投資額のギャップの今後の予想は下図の通りである。

図 米国における上下水インフラへの投資額のギャップ(単位十億ドル)
(出典:The Economic Benefits of Investing in Water Infrastructureより引用)

Value of Water Campaignの同調査報告書によると、水インフラの更新に必要となる資金需要を地域別で見た場合、南部が全体の34%と最もニーズが高く、次いで中西部と西部(各23%)、北東部(20%)と続いている(下図)。

図 米国における水インフラ資金需要の内訳
(出典:The Economic Benefits of Investing in Water Infrastructureより引用)

また、“The Economic Benefits of Investing in Water Infrastructure”では、水インフラの更新が進まなかった場合、米国の事業活動に多大なリスクを与えると指摘している。仮に全米レベルで水供給サービスが1日停止した場合、企業の販売損失額は合計435億ドル(約4兆8299億円)、従業員1人当たりの損失額は230ドル(約2万5537円)に達するとともに、GDP損失額は225億ドル(約2兆4982億円)に上るとしている。また、水消費量が多い産業部門では、1日当たりの販売額が最大75%減、労働者1人当たりの販売額は最大5800ドル(約64万3986円)減となる。更に、水供給サービスが8日間停止した場合、年間GDPの1%が失われ、約190万件に上る雇用が損失の危機を迎えると分析している。

Value of Water Campaignディレクター兼US Water AllianceのCEOを務めるRadhika Fox氏は、「今回の報告書では、水インフラ産業への投資は、質の高い雇用を創出し、米国企業の競争力を強化するとともに、全米に経済発展をもたらすことが明らかにされた。水インフラの更新に必要とされる投資を行った場合、その結果として、年間2200億ドル(約24兆4270億円)に上る経済効果、130万件の雇用創出をもたらす。これは、我々が米国議会や全米の政策立案者に対して伝達したいメッセージである」と述べた。

[1] http://thevalueofwater.org/sites/default/files/Economic%20Impact%20of%20Investing%20in%20Water%20Infrastructure_VOW_FINAL_pages.pdf

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