英ガーディアン紙(電子版)が2017年9月5日、「世界中の水道水にプラスチック繊維」と題した記事を配信した。世界のジャーナリスト有志からなる非営利団体、Orbメディアが十数か国の水道水のサンプルを調査分析したもので、全体では、サンプルの83%がプラスチック繊維に汚染されていたという。調査の結論は次のとおりである。
- プラスチック繊維による汚染度が最も高いのは米国で、4%に達していた。水道水のサンプル採取場所は、連邦議会建物、環境保護庁本部、ニューヨークのトランプタワー等である。次に汚染度が高かったのがレバノンの93.8%とインドの82.4%であった。
- 英国、ドイツ、フランスを含む欧州諸国は汚染度が最も低かったが、それでも2%であった。平均繊維数は、500mlあたり米国が4.8個であるのに対し、欧州は1.9個であった。
同紙によると、今回の分析は、グローバルな環境でマイクロプラスチック汚染があまねく広がっていることを示している。アイルランドの水道水のマイクロプラスチック汚染について、別の調査分析を実施した同国ゴールウェイ・メイヨー技術研究所のAnne Marie Mahon博士によると、「どのような健康影響があるのかわからない。そのため予防原則に従うべきである。懸念されるのは、非常に小さなプラスチック粒子と、それに付着した化学物質や病原体である。ナノ粒子であれば細胞を貫通し、臓器に浸透することもありうる。困ったことだ」という。
マイクロプラスチックは有害物質を吸収することでも知られている。野生動物の研究では、有害物質が体内に放出されるケースもあるという。英国プリマス大学のRichard Thompson教授は、英国で漁獲された魚類の3分の1からマイクロプラスチックが検出されていることに言及しつつ、「プラスチックが有害な化学物質を放出することは、早くから確認されている」と指摘した。
グローバルなマイクロプラスチック汚染の規模は、最近明らかになり始めたにすぎない。ドイツの調査研究では、24ブランドのビールすべてから繊維や破砕体が見つかった。蜂蜜と砂糖からも見つかった。パリでは2015年に、大気から落下するマイクロプラスチックが見つかり、各都市に1年あたり3~10トンの繊維が堆積していると推定された。もちろん、各家庭の空気にもマイクロプラスチックが浮遊しているという。この研究を実施したキングスカレッジ・ロンドンのFrank Kelly教授は2016年の英国議会聴聞会で、「マイクロプラスチックを吸い込めば、その化学物質が肺の下部に到達し、循環器全体に入り込むかもしれない」と証言した。同教授は今回のOrbのデータを見て、「摂取したプラスチックが健康リスクかどうかを確認するための研究が急務である」とガーディアン紙に語った。