再生水の利用を促進・阻害する5つの要因

2017年10月13日、Water. desalination + reuse誌は再生水に関する報告書“Water Reuse: Drivers, Innovations and Public Perceptions”を発表し、水再利用市場の成長に影響する要因に対する世界各地の産業界の見方についての調査結果を報告した[1]

水再利用市場の成長に影響を及ぼす要因に関し、本報告書が示した主な知見は以下のとおりである。なお、本調査は、2017年7月19日までの4週間にわたってオンライン聞き取り調査を通じて行われた(回答者は347名)。

  1. 水の再利用を押し進める最大の要因は水不足である

調査が提示した5つの要因(水不足、コスト、規制[飲用目的]、技術、規制[非飲用目的])のうち、水の再利用を推進する要因として最も重要だと回答されたものは、水不足で5点中3.79点であった。回答者の68.94%が、水不足について「非常に強力」または「強力」な水再利用の推進要因であると回答した。また、水不足に最も高い点数を付けたのは米国在住の回答者であった。


図 水の再利用の推進となる要因のランク付け(数字は回答者の割合(%))
(出典:Water Reuse: Drivers, Innovations and Public Perceptions)

 

  1. 水再利用プロジェクトを進める最も大きな障壁はコストである

一定の距離がある場合の水の再利用を阻む最大の障壁を尋ねたところ、コストが5点中3.56点で最高点であった。合計で60.75%の回答者が、コストが「非常に強力」または「強力」な障壁であると回答した。特に、アジア・太平洋地域の回答者から最も高い点数が付けられ(3.69点)、同地域では「非常に強力」または「強力」な障壁であると答えた回答者は67.44%であった。

 

  1. 水再利用に最も影響が大きい技術分野は水処理技術

水再利用市場に影響が大きい技術分野について尋ねたところ、水処理技術が5点中3.79点で最高点であった。これまでに回答者の地域の市場において達成された技術革新の程度について尋ねたところ7分野中、6分野においてこれまでに「中程度」から「強力」な技術革新が行われてきたと評価された。水質モニタリング以外の全ての技術分野について、アジア・太平洋地域の回答者が平均より高い点数を付けた。一方で、中東・アフリカ地域の回答者はすべての技術分野について平均よりも低い点数を付けた。

表 再生水市場への影響が大きい技術分野
(出典:Water Reuse: Drivers, Innovations and Public Perceptions)

技術分野 スコア
Water treatment technology innovations 3.79
Water quality monitoring innovations 3.33
System design innovations 3.32
Energy saving innovations 3.30
Renewable energy innovations 3.18
Reuse infrastructure innovations 3.04
Public outreach innovations 2.69

また、水再利用における技術の有効性については、「逆浸透」技術が最大スコアを獲得し、それに続くのが「限外ろ過」、「膜分離活性汚泥」、「精密ろ過」という結果となった。地域的にみると、「逆浸透」技術に関してはアメリカでのスコアが最大となった。

技術分野 スコア
Reverse osmosis 8.00
Ultrafiltration 6.81
Membrane bioreactor 6.17
Microfiltration 6.08
Nano filtration 5.81
Thermal distillation 4.47
Membrane distillation 4.12
Forward osmosis 3.67

 

  1. 飲用水としての再利用をする上で最大の障壁は国民に受け入れられるかどうか

直接飲用再利用に対する最大の障壁は何か尋ねたところ、国民の受容が3.84点で最も高かった。70.37%の回答者が「非常に強力」または「強力」な障壁であると回答した。このうち、50.93%が「非常に強力」を回答した。回答者のうち、行政セクターに所属する者は、3.94点と特に高い点数を付け、さらに73%が「非常に強力」または「強力」と回答、このうち54.6%が「非常に強力」と回答した。

 

  1. 国民の意見を変えるには、成功事例の紹介が最も効果的

再生水に対する国民の受容の意識を高めるために最も効果的な手法は何か尋ねたところ、既存の成功事例の紹介が最も高い3.95点であった。これに、明確な規制ガイドライン(3.94)、一般公衆の教育(3.89点)が僅差で続いた。

[1] 本報告書は、以下のwebページにて必要事項を記入のうえ、ダウンロード可能。
https://www.desalination.biz/downloads/Water-Reuse—Drivers–Innovations-and-Public-Perceptions/31

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