Frontier Group、米国の産業界による水汚染状況を発表

カリフォルニア州ニューポートに拠点を構える水セクタ非営利団体Frontier Groupは2018年3月28日、米国の産業界による水汚染状況を示した“Troubled Waters: Industrial Pollution Still Threatens American Waterways[1]”を発行した。同報告書によると、1972年に制定された水質浄化法(Clean Water Act)は、米国の水域を汚染から守る転機となりそれ以降水質改善が進んでいるものの、法規制の遵守や執行の現状を鑑みた場合、アカウンタビリティ(説明責任)が欠如しており違法行為を許容する非常に手緩い体制が蔓延化していると指摘した。

2016年1月から2017年9月までの21カ月間において、水質浄化法に則り許可された水質基準値を上回る汚染水が、河川や湖沼などの水域へ主要産業施設から放出された回数は8100回を超えている。そのうち約3分の1(2600件以上)は、レクリエーション、フィッシングなどの利用によって既に汚染された水域へ更に汚染水が放出されており、水質回復の阻害要因となっている。基準値を上回る汚染水の放出が全米で多く見られる州は、テキサス州、ペンシルバニア州、アーカンソー州などである(下図)。また、主要産業施設のうちの約40%(1100件以上)が、少なくとも1回は基準値を上回る汚染水を水域へ放出したほか、これらの産業施設のうちの4分の3は汚染水の放出を繰り返し実施してきた。基準値を超えて汚染水を放出した主要産業施設が多く見られるだけでなく、水質浄化法に則り許可された水質基準値を何倍も上回る量の汚染水を水域へ放流した産業施設も存在している。


図 全米各州での汚染水の排出件数
(出典:Troubled Waters: Industrial Pollution Still Threatens American Waterways)

このように基準値を上回る汚染水の放流を防止するには、連邦政府や州政府による厳格な法規制の執行が必須であるものの、それが欠如している。米環境保護庁(EPA:Environmental Protection Agency)総括検察官(Inspector General)等が実施した様々な調査によると、特に州政府環境担当部局による水質浄化法の執行に対する取り組みが手緩くなる傾向にある。2017年に連邦政府や州政府が実施した主要産業施設への検査数は過去5年間で年々減りつつある(下図)。また、違反があっても罰金やペナルティが課せられていない場合も多い。2011年から2017年までの間において基準値を満たしていない産業施設数は年間平均2万7849件に達しているものの、連邦政府や州政府が措置を講じていない施設数はその約半数の1万3076件にも上る。さらに罰金が科せられても罰金額が低く再発防止につながっていない。2017年にEPAが課した罰金額は2011年以降最低水準まで低下した。


図 主要産業施設への検査数の推移
(出典:Troubled Waters: Industrial Pollution Still Threatens American Waterways)

トランプ政権はEPAの予算削減や法規制の執行軽減を提案しており、水域への違法汚染を加速化させる恐れがある。同政権は2019年度において、水質浄化法を含む環境保護プログラムの実施予算を3040万ドル(約32億6833万円)減額することを計画している。水質浄化法の許可プロセスや法規制の執行改善を目的として州政府へ付与される補助金の減額も予定されている。そのため、環境保護プログラムに対する予算額は少なくとも過去7年間で配当された補助金額を下回ると見られている。

野生生物や地域住民の健康維持に必須となる水域を保護するには、連邦政府や州政府は水質浄化法の執行を厳格化するべきである。法規制の遵守強化に向けて、水質浄化法が全ての水域に確実に適用され、罰則を課せられることなく汚染排出事業者が汚染物質を水域へ放流しないように政策立案者は取り組む必要がある。また、技術進歩や水質向上へのニーズ拡大に伴い水質汚染が改善される基準の執行を強化するとともに、連邦政府や州政府が付与する補助金等を復活、増額することで、環境保護プログラム(水質浄化プログラム)の有効性を改善する資金源を州政府へ確保させることも重要となる。また、汚染排出事業者による水域汚染を防止するために適切な罰則を迅速に科すほか、主要産業施設への立入検査数を増やすことで法規制の遵守や執行を強化するべきである。また、連邦政府や州政府による水域への違法投棄への取締りが十分でない場合、水質基準値を遵守させるために住民の訴訟権利を保護することも重要である。さらに、水質浄化法を適切に執行できていない州政府は、連邦政府の資金源や規制取締りを担う州政府の主な規制当局が欠如しているなど、結果として機能不全に陥っている。また、主要産業施設は有害化学物質の使用を減らし、汚染物質の発生を最小限にする改革を行うべきである。

[1] https://frontiergroup.org/sites/default/files/reports/EA_TroubledWaters_scrn_0.pdf