インドTamil Nadu州に位置するTirupur地区では、稼働する繊維染色施設から排出される混合塩スラッジの海域(深海)廃棄の扱いを巡り、National Institute of Ocean Technology(NIOT)とTamil Nadu Pollution Control Board(TNPCB)と間で意見が対立している。
Tirupur地区にて稼働する繊維染色施設は、混合塩スラッジの深海廃棄を巡り、インド政府研究機関NIOTからの助言を求めている。これに対して、同地区を管轄とする州政府機関TNPCBは、仮にNIOTが混合塩スラッジの深海廃棄を合意したとしても、最終決定権は州政府に委ねられていると反論している。繊維染色施設は、繊維を染色するために、染浴の中に塩を活用する。ZLD(Zero Liquid Discharge)システムを採用した廃水処理過程において、染色に利用される塩の80%以上、廃水の90%以上が回収されるものの、混合塩が生成される。混合塩を廃棄する技術が開発されていないことから、過去7年間で蓄積された混合塩の量は約25,000トンに達する。
一方、Gujarat州Bhavnagarに位置する研究機関CSIR-Central Salt & Marine Chemicals Research Institute(SCIR-CSMCRI)は、有害廃棄物である混合塩を塩化ナトリウムへ転換させるプロセスを開発し、同物質を安全に廃棄するとともに、副産物として塩化ナトリウムを市場へ販売することも可能となる。2018年8月にはTirupur地区に位置するChinnakarai公共排水処理プラントにて同技術が試験的に導入された。しかし、混合塩の処理能力は1日あたりわずか約3~5トンに留まった。
Tirupur地区の染色協会理事長を務めるS Nagarajan氏は、「Chinnakarai排水処理プラントでは、処理能力よりも過去に蓄積された混合塩の量の方が遥かに多い。そのため、大量の混合塩を破棄できる技術やシステムが必要である。同問題を解決するために、Tirupur地区に位置する研究機関Indian Institute of Technology Madras(ITT-Madras)が研究調査を実施し、生態系に影響を与えずに混合塩を深海へ破棄することが可能であるとした」と述べた。更に同氏は、「ITT-Masrasが実施した調査結果を我々が公開した際、TNPCB当局はNIOTがこれを認可することを望んでいた。そのため、我々はNIOTからの支援を求め、直接NIOTとやり取りするようTNPCBへ促した」と述べた。これに対してTNPCB担当者は、NIOTが混合塩の深海廃棄に合意しガイドラインを発行したとしても、州政府が最終決定の権限を有するとの見解を示した。