ベトナム関連法令:
産業排水基準(QCVN40:2011/BTNMT)
産業排水中の各規制項目の最大許容値Cmaxは以下によって算出される。
Cmax = C×Kq×Kf
C:規制項目ごとに割り当てられる数値
Kq:排水先の水域の流量または水域の容積によって割り当てられる係数
Kf:24時間当たりの排水量によって割り当てられる係数
それぞれの具体的な数値は下表の通りである。まずCだが、この値はさらに排水先の水域の用途によってAとBの2分類される。
A:生活用水を目的とした水域
B:生活用水以外を目的とした水域
規制項目 | 単位 | C値 | ||
---|---|---|---|---|
A | B | |||
1 | 温度 | ℃ | 40 | 40 |
2 | 色度 | Pt/Co | 50 | 150 |
3 | pH | – | 6 – 9 | 5.5 – 9 |
4 | BOD5(20℃) | mg/l | 30 | 50 |
5 | COD | mg/l | 75 | 150 |
6 | 総浮遊物質 | mg/l | 50 | 100 |
7 | ヒ素 | mg/l | 0.05 | 0.1 |
8 | 水銀 | mg/l | 0.005 | 0.01 |
9 | 鉛 | mg/l | 0.1 | 0.5 |
10 | カドミウム | mg/l | 0.05 | 0.1 |
11 | 六価クロム | mg/l | 0.05 | 0.1 |
12 | 三価クロム | mg/l | 0.2 | 1 |
13 | 銅 | mg/l | 2 | 2 |
14 | 亜鉛 | mg/l | 3 | 3 |
15 | ニッケル | mg/l | 0.2 | 0.5 |
16 | マンガン | mg/l | 0.5 | 1 |
17 | 鉄 | mg/l | 1 | 5 |
18 | シアン化合物 | mg/l | 0.07 | 0.1 |
19 | フェノール | mg/l | 0.1 | 0.5 |
20 | 鉱物油 | mg/l | 5 | 10 |
21 | 硫黄化合物 | mg/l | 0.2 | 0.5 |
22 | フッ素化合物 | mg/l | 5 | 10 |
23 | アンモニウム態窒素 | mg/l | 5 | 10 |
24 | 全窒素 | mg/l | 20 | 40 |
25 | 全リン | mg/l | 4 | 6 |
26 | 塩化物 | mg/l | 500 | 1000 |
27 | 残留塩素 | mg/l | 1 | 2 |
28 | 有機塩素系農薬 | mg/l | 0.05 | 0.1 |
29 | 有機リン系農薬 | mg/l | 0.3 | 1 |
30 | PCB | mg/l | 0.003 | 0.01 |
31 | 大腸菌群 | mg/l | 3000 | 5000 |
32 | 全アルファ線強度 | Bq/l | 0.1 | 0.1 |
33 | 全ベータ線強度 | Bq/l | 1.0 | 1.0 |
つづいてKqは、排水先が河川、水路、運河などの流れがある水域の場合は、その流量によって決定される。
排水先の水域の流量(Q)(m3/sec) | Kq |
---|---|
Q ≤ 50 | 0.9 |
50 < Q ≤ 200 | 1.0 |
200 < Q ≤ 500 | 1.1 |
500 < Q | 1.2 |
一方で、湖や沼などの場合はその水域の容積によって以下のとおりKqが定められる。なお体積Vは、連続する3年間のなかで最も乾燥した3か月間での容積の平均値として算出される。
排水先の水域の容積(V)(m3) | Kq |
V ≤ 10×106 | 0.6 |
10×106 < V ≤ 100×106 | 0.8 |
100×106 < V | 1.0 |
以上がKqの決定方法だが、もしも水域の流量または容積が不明な場合は、それぞれKqは0.9または0.6として計算される(つまり、排水基準の最大許容値が小さくなり、より厳しくなる)。また排水先が沿岸の塩水である場合は、そこが保全区域やレクレーションなどに利用される場所であればKq = 1.0となり、それ以外であればKq = 1.3となる。
最後にKfだが、こちらは24時間当たりの排水量によって決まる。排水量Fは、環境影響評価報告書などにおいて記載される最大排水量に基づき計算される。
24時間当たりの排水量(F)(m3/24h) | Kf |
---|---|
F ≤ 50 | 1.2 |
50 < F ≤ 500 | 1.1 |
500 < F ≤ 5,000 | 1.0 |
5,000 < F | 0.9 |
その他の規制
排水に対する環境保護費用
排水による環境汚染の制限、浄水の経済的な利用、環境保護基金への財源確保を目的とし、2013年に排水に対する環境保護費用に関する政令(25/2013/ND-CP)を定めている。本政令の対象は、工業廃水または生活廃水を排出している個人および組織であり、対象者は環境保護料金を納めることとなる。特に、重金属含有廃水と重金属非含有廃水の2種類の工業廃水に対する環境保護料金についても、詳細に規定している。
そして、上記の政令の下位規則として公布されたのが、排水への環境保護費用に関する政令第25/2013/ND-CP号の実施規則となる共同通達第(63/2013/TTLT-BTC-BTNMT号)である。本通達の対象は環境中に放出される排水であり、工業排水と生活排水に分けられる。工業排水については、農業、水産業、給水場、ビル建設、電気電子機器をはじめとする製造業などの分野での生産・加工所から出される排水が対象となる。一方で生活排水とは、各家庭や公共機関などから出される排水を指す。
本通達で規定される、工業分野における排水の環境保護費用の算定式は以下の通りである。
Fq = (f+K)/4 + Cq
Fq:四半期ごとの環境保護費用(VND)
f:1,500,000(VND)(固定費)
K:1日当たりの排水量(m3/day)
Cq:排水中のCOD濃度およびTSS濃度に基づき計算される変動費(VND)
まずKだが、排水量に応じて次のとおり7分類される。
1日当たりの排水量(m3/day) | K |
---|---|
30未満 | 2 |
30 ≤ 且つ≤ 100 | 6 |
100 < 且つ≤ 150 | 9 |
150 < 且つ≤ 200 | 12 |
200 < 且つ≤ 250 | 15 |
250 < 且つ≤ 300 | 18 |
300 < | 21 |
次にCqについては、下記の式に基づき算出される。排水総量は当該四半期の実際の排水量を用いる。
Cq
||
排水総量(m3)
×
(排水中のCOD濃度(mg/L)×1000(VND/kg)+排水中のTSS濃度(mg/L)×1200(VND/kg))
×
10-3