世界保健機関、マイクロプラスチックの低減に向けて更なる調査を提言

世界保健機関(WHO:World Health Organization)は2019年8月22日、飲料水に含有するマイクロプラスチックに関する最近の研究分析に基づき、環境中に含まれるマイクロプラスチックや同物質によるヒトの健康への潜在的影響に関して更に調査を進めるべきであると提言した。また、環境の改善や人間への曝露を低減するために、プラスチック汚染の軽減を強調した。

世界保健機関が実施した分析報告書[1]では、飲料水に含有するマイクロプラスチックに関する最近の見解が盛り込まれており、150マイクロメーター以上の大きさのマイクロプラスチックが人間の体内に吸収される可能性は低いほか、この大きさを下回るマイクロプラスチックの体内への摂取も限定的であると結論付けた。しかし、データが限定的であるとした上で、ナノサイズレベルに及ぶ微小粒子のマイクロプラスチックが体内へ吸収される可能性はあるとした。

マイクロプラスチックへの曝露や同物質の健康への潜在的影響をより正確に評価するために更に様々な調査を進める必要があると、世界保健機関は主張している。その例として、水中内のマイクロプラスチックの粒子を測定する基準手法の策定や、淡水へのマイクロプラスチックの発生源や発生状況の把握、異なる処理プロセスの有効性の評価、といった調査手法が挙げられる。同機関はまた、死に至る下痢を引き起こすなど、人間の健康にリスクが生ずるとされる微生物病原体や化学物質の除去を優先的に実施することを、水道事業者や規制当局へ提唱している。糞便や化学物質を除去するには、飲料水と排水の双方を処理することが挙げられ、これらの手法はマイクロプラスチックも同時に除去することから非常に有益である。

排水処理では、除去率が高いろ過などを通じて、排水に含有するマイクロプラスチックを90%以上除去することが可能となる。一方、従来の飲料水処理方法は、マイクロメートルよりも小さな粒子物を除去することができる。飲料水の処理や排水処理を十分に行うことで、世界各地における水域汚染の主要因である糞便が含有した汚染水への曝露を解決することができ、これはマイクロプラスチックの低減にもつながる。

[1] 以下よりダウンロード可能。
https://apps.who.int/iris/bitstream/handle/10665/326499/9789241516198-eng.pdf?ua=1