フロリダ州のTampa Bay海水淡水化プラント、フル稼働へ

プロジェクトにかかわった企業のうち3社が倒産したり、所有権や管理権をめぐる紛争が連邦裁判所にまでもつれこんだりと、過去にさまざまなトラブルにみまわれたTampa Bay海水淡水化プラントは、2008年の早い段階にようやくフル稼働にはいる見通しが立った――これは、当初の予定からするとじつに6年の遅れである。

アメリカ最大のこの海水淡水化プラントは、この地域の帯水層への増大しつつある水需要を緩和すべく、日量9万5000立方メートルの造水能力をもつよう設計されており、将来はさらに日量3万7000立方メートル分の増設が計画されている。

このプロジェクトはもともと、海水逆浸透(SWRO)淡水化プラント本体、海水取入口、濃縮液排出システム、化学薬品の貯蔵と投与のための諸施設、淡水化された水を送るための全長24キロメートルの水道本管などの建設をおもな内容としていた。その後、プロジェクトの範囲が拡大され、ファースト・パス膜をすべて設計しなおして交換するほか、化学薬品の諸施設、前処理システム、凝集、沈殿といった事項への一連の変更など、大規模な修理と修復の作業までもが含まれることになった。

さらに、砂濾過床と多くのポンプの変更、それに新たな濾過システムの追加設置も必要となった。この地域の約180万人への水の供給を受け持っている公共水道当局のTampa Bay Waterは、2004年にAmerican Water/Predesaに対し、期間2年間の修復作業を発注した。

このTampa Bayの淡水化プロジェクトは、当初は予算が1億1000万ドル(約120億円)だったが、現在ではそれが推定で1億5000万ドル(約160億円)ほどにふくらんでおり、このコスト増加分のうち約2900万ドル(約31億円)は修復作業のためのものである。

 

プラントの概要

原水の取入口は、隣接する発電所の4本の排水トンネルの脇にある。4本のトンネルのうち2本からは、1日に16万6000立方メートルの冷却排水が原水取入口に流れ込むようになっている。取入れられた原水は、ポンプで前処理施設に送られる。

前処理施設で、原水は濾過用薬剤と硫酸第二鉄を添加されて2段階の砂濾過床を通される。濾過媒体はたえず逆洗されており、これが前処理水のSDI値をさらに低めている。また、この段階で、必要に応じてpHの調整をすることもある。

 

逆浸透(RO)システムには7つの独立したトレインがあり、各トレインは移送ポンプ、カートリッジ・フィルタ、逆浸透膜、および高圧ポンプとエネルギー回収タービン(ERT)から成っている。

各トレインでは、800馬力の垂直型タービン・トランスファー・ポンプが前処理槽の水を5マイクロメートル・カートリッジ・フィルタ・アセンブリに送り込む。そこから、水はROプロセスへ入っていく。

ROプロセスでは、複数の逆浸透膜から成る各ユニットに、2250馬力の高圧ポンプで加圧された水が注入される。このポンプには周波数可変ドライブが備わっており、水の塩分濃度に応じて供給圧を625 psiから1050 psiまでの範囲で変えることができる。塩分濃度は、通常の海水では28~35 ppt(1 pptは1000分の1)だが、Tampa Bayの場合はこの幅が広く、18~32 pptの範囲で変動する。このように、水の注入圧を変えることができるので、プラントの稼働電力を塩分濃度の変化に応じて調整することが可能である。

 

プラントに7基あるROユニットは、それぞれが168個の圧力容器から成り、各圧力容器には8個のSWRO膜エレメントが収納されている。各ユニットの最小定格造水能力は日量1万6000立方メートルである。逆浸透処理された水は、ユニット下部の直径1メートルのヘッダーパイプに流れ込む。高圧の濃縮液はERTでエネルギー回収されたあと、発電所の冷却水と70対1の割合で混合されて塩分を薄められ、排出される。

逆浸透処理された水は、そのままではまだ使えず、さらなる処理のために各種化学薬品貯蔵容器のある建屋へ導かれる。22.5立方メートルのバルク・タンクと4.5立方メートルのデイ・タンクに、塩素殺菌用の次亜塩素酸ナトリウムが貯蔵されている。また、50トンのサイロには、硬度を増すための水酸化カルシウムが収納されており、これは高さ約12メートルの2基の石灰コンタクト・チェンバーのなかで、逆浸透処理された水に加えられる。

それと同時に、pH調整のために炭酸溶液がチェンバー内に散布される。この炭酸溶液をつくるのに用いられる二酸化炭素は、別のオンサイト・タンクに貯蔵されている。また、石灰チェンバーの排出堰には各種化学薬品の散布装置が装着されており、これにより、必要に応じてpHをさらに調整することができる。

 

このようにして最終処理された水は容量2万立方メートルの貯蔵タンクに貯められ、そこから直径1メートル、全長24キロメートルのパイプラインで、航行可能なふたつの川を越えてBrandon地域配水施設に送られる。そのうちひとつの川では、川底の18メートル下に550メートルのファイバーグラス・パイプを通すのに、傾斜掘り工法が用いられた。

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