ポンプを駆動する伝統的な風車――この単純なコンセプトにもとづく海水逆浸透淡水化装置を、オランダのデルフト工科大学(TU Delft)が開発した。この装置では、風車が駆動する高圧ポンプが、約60バールの圧力で逆浸透膜に水を通し、それによって海水から淡水を直接得ることができる。動力に風車を使うこの方式は、たとえば海岸の乾燥地帯の僻地などで利用するのに適している。
だが、単に風車と淡水化装置の組み合わせというだけなら、これはすでに商業化されている。このような組み合わせでは通常、風車で発電した電力を蓄え、その電力で逆浸透用の高圧ポンプを駆動する。ところが、電力の貯蔵はとりわけ費用がかかるし、エネルギー変換時のロスもばかにならない。
TU Delftのシステムはこの点に着目し、高圧ポンプを風車によって直接駆動するようにした。無風時への備えとしては、水を蓄えておくことで対処することができる。水の貯蔵は、電力の貯蔵よりもずっと安くつくのだ。
このシステムで使う風車は灌漑用のもので、比較的ゆっくりとまわり、また、きわめて頑丈である。風速の変化を見込んだ風車の能力をもとに計算すると、1日の造水能力は5ないし10立方メートルで、これは人口500人程度の小さな村の飲用水をまかなうにはじゅうぶんである。貯水量は、無風状態が最長で5日間つづく場合を想定し、それに対処するのにじゅうぶんな量となっている。システムには3種類の安全装置(乾燥運転検知器、低回転数検知器、および高回転数検知器)がついているが、これも機械的に作動するので、電力は必要としない。
試作機の1号機は、デルフト近郊の高速道路A13号線沿いに建設され、すでに稼働している。この試作機は、2008年3月の第1週に解体されてオランダ領アンティル諸島キュラソーに運ばれ、そこで実際の海水を使った試運転を行なうことになっている。