上院の環境・公共事業委員会は2008年7月31日、飲用水中の過塩素酸塩(perchlorate)およびトリクロロエチレン(TCE)への公衆の曝露を低減するための複数の法案を可決した。これら法案について同委員会のBarbara Boxer委員長(民主党、カリフォルニア州選出)は声明のなかで、「われわれの家族と地域社会の脅威となっている最も危険な汚染のいくつかに対処する」ためのものだと述べている。
上院委員会を通過したのは4つの法案で、そのうちふたつは過塩素酸塩に関するもの、ひとつはTCEに関するもの、残るひとつは、小規模な公共上水道システムが国の重要飲用水規制を遵守するのを支援するプログラムの創設を環境保護庁(EPA)に求める法案である。これら4つの法案は、発声表決によって可決された。
このうち、「過塩素酸塩のモニタリングと知る権利に関する法案」(S.24)は、EPAが過塩素酸塩のモニタリングを正式に義務化する重要飲用水基準を制定するまでのあいだ、水道事業者による水道水中の過塩素酸塩のモニタリングを暫定的に義務づけるようEPAに命じるものである。この法案はまた、過塩素酸塩による飲用水汚染をひろく国民に知らしめることも求めている。
つぎに「過塩素酸塩からの妊婦と子どもの保護に関する法案」(S.150)は、EPAに対し、妊婦や子どもなど、過塩素酸塩の被害をうけやすいひとびとを保護するために、健康への影響に関する情報提供や飲用水基準の策定をただちに開始するよう求めている。
アメリカで生産されている過塩素酸塩は、ほとんどがロケット燃料の主要成分として使われている。EPAによると、過塩素酸塩製造業者の廃棄物や、過塩素酸塩を含む化学物質の不適切な廃棄処分による汚染が、近年ますます土壌や水でみつかるようになってきているという。
S.24とS.150の提出者であるBoxer委員長は、過塩素酸塩によってカリフォルニア州など35の州の上水道が汚染されているにもかかわらず、EPAが飲料水中の過塩素酸塩基準を制定するのに時間がかかりすぎているので、両法案を提出したと述べた。
なお、下院環境・有害物小委員会は2007年11月、過塩素酸塩の国の飲料水基準を設定するため同様の法案を承認している。
TCEに関しては、「TCE低減法案」(S.1911)がおなじく上院環境・公共事業委員会を通過した。これは、EPAに対し、妊婦、乳児、子どもなどのほか、一般のひとびともTCEの被害をうけぬよう、水道水基準の改正を求める法案である。TCEはおもに、金属部品からグリスを取り除くための溶剤として使われている。S.1911法案はまた、TCEの危険レベルを知らせる情報提供の仕組みを確立するようEPAに求めている。
上院環境・公共事業委員会を通過した第4の法案は「小規模コミュニティ上水道財源法案」(S.1933)で、これは、先住民部族などの小規模コミュニティの上水道システムが国の飲用水規制を遵守できるよう、支援するためのプログラムの創設をEPAに求めるもので、このために7年間にわたって毎年7億5000万ドル(約820億円)の支出を認めている。