環境保護庁(EPA)の「子どもの健康保護諮問委員会」(CHPAC)は2008年10月23日、飲用水中の過塩素酸塩の最大許容濃度(MCL)を設定するようEPAに提言することを明らかにした。安全飲料水法はEPAに対し、3つの条件が満たされた場合はMCLを設定するよう求めており、CHPACは過塩素酸塩のケースではそれら条件がすべて満たされているとして、MCLの設定を強く主張している。
過塩素酸塩が3つの条件を満たしているとCHPACが判断している理由は、以下のとおりである。
第1の条件:その汚染物質は悪影響をおよぼしている――過塩素酸塩は甲状腺の機能を損ない、甲状腺ホルモンのレベルが低下すると脳の発達が阻害されることが知られていることから、この条件は満たされている。
第2の条件:その汚染物質は国民の健康懸念の原因となるほどの頻度と濃度で公共上水道から検出される――過塩素酸塩はこの条件も満たしている。
第3の条件:EPAは健康リスクの原因を有意に低減することができる――過塩素酸塩に関しては処理の方法がすでに確立されているので、この条件も満たされている。
以上のことから、CHPACは次のように結論づけている。「したがって、環境保護庁長官は安全飲料水法のもとで、全国に何百万といる妊婦、授乳期の母親、および乳児の健康をまもるために行動を起こす責任がある」
EPAは以前に、過塩素酸塩のMCLを設定しないという結論を出しているが、CHPACはその結論を導くもとになったEPAの分析の批判もおこなっている。EPAは、過塩素酸塩については1リットル当たり15マイクログラムという健康基準値を設定し、この物質の濃度が公共上水道システム内でこの基準値を上回ることはめったにないと結論づけている。健康基準値というのは、健康にとって有意なリスクを生じないとEPAが考える曝露レベルをいう。
だがCHPACは、乳児が基準用量(RfD)の2倍ないし5倍の過塩素酸塩に曝露されることをEPA自身の分析が示していると指摘する。RfDというのは、毎日それだけ曝露しても問題はないとEPAが考える用量を指す。諮問委員会のメンバーであるGary Ginsbergは、EPAはRfDをいったん設定してから、おかしなモデルを使ってそのRfDの超過を正当化したと批判している。
CHPACはまた、EPAが設定した0.7 μg/kg/日というRfDが乳児の健康を守るのにじゅうぶん低い値であるかどうかについても疑問を投げかけている。