インド政府、上下水道整備事業で民間投資を募る ――2025年には水需要が1兆1000億立方メートルに

出生率上昇と急速な経済成長により、インド国内の水利用は急速に増加している。中央水委員会(Central Water Commission)が2009年1月に示した予測では、国内の水需要量は、2000年には6,340億立方メートルであったのが、2025年には1兆1000億立方メートルに、2050年には1兆4000億立方メートルに増加するという。

このように水関連の設備投資が急がれるインドで、同部門に投入される政府予算は年々増加しており、2009年春期予算として水資源省に14億ユーロ(約1,655億円)が認められた(前年同期比12%増)。それでもなお、甚大な資金が不足しているというのが世界銀行の見方だ。専門筋の予測では、2015年までに同国の水セクターに必要とされる投資額は2兆8000億インド・ルビー(約5兆3000億円)という。

こうした背景のもと、インド政府は民間企業の市場参入に期待を寄せており、外国投資も視野に入れたPPP(Public Private Partnership)方式による大規模事業の実施を支援し始めている。これまでインドの上下水関連事業に参入している民間企業はほとんどない。これは、同国の水道料金システムの枠組みでは運転維持費すらも引き合わないという採算性の問題があるからである。

 

国内の上下水道の整備状況

2001年の統計局の発表によると、当時のデータで3億人とされていた都市居住者数の90%にあたる2億7000万人が、自治体による飲料水供給システムでカバーされていた。一方、下水道をめぐる状況は厳しい。中央汚染管理局(CPCB: Central Pollution Control Board)のデータによると、人口5万人以上の約1,000都市における一日の下水量は約300億リットルだが、対応する下水処理施設の処理能力は一日わずか80億リットルしかない。

 

民間企業の参入に関わる法規枠組み

インドの法規制では、水市場への民間参入に際しては以下のような形態が可能になっている。

1)請負契約方式(Service Contract):民間事業者が庶務サービス(メーター検針、請求書発行、売掛金管理等)を請け負う。通常、契約期間は5年から最長で10年となっている(更新可)。

2)管理契約方式(Management Contract):施設の経営・保守は民間事業者に委ねられるが、拡張・改修工事に関する投資は公共の管轄のまま。本方式の場合も、契約期間は最長10年。

3)BOT(Build Operate Transfer)/BOOT(Build Own Operate Transfer)事業方式:民間事業者が自ら資金を調達し、施設を建設し、所有した上で一定期間管理・運営を行って資金を回収した後、施設の所有権を公共に譲渡・移転する方式。

4)利権契約方式(Concession Contract):本法式では、民間事業者の活動余地がさらに大きくなる。一定期間、特定地域における独占的地位が与えられ、施設全体の管理に対する全権を有し、さらに拡張投資も自由に行うことができる。同方式の契約期間は通常25~30年。

 

民間企業の活動状況

インドの水処理市場で活躍する民間企業の中でも勢いがあるのが、上水・下水事業の両部門で長年の実績を誇るMehindra Groupである。関連事業のうち最大級であるのが、Tamil Nadu州のTiripur市におけるグリーンフィールドプロジェクトだ。これはBOOT(Built Own Operate Transfer)方式によるもので、最大給水量1億8500万リットル/日規模の上水道ならびに最大処理能力1500万リットル/日規模の浄水場の建設を行う。

またTata Groupも、子会社であるJamshedpur Utilities & Services Company(Jusco)を通して、水処理市場に参入している。Juscoは工業都市Jamshedpur市内の飲料水供給(サービス対象人口は約50万人)と排水処理を担当しており、これまで、給水事業に携わる民間企業としては国内唯一の存在であった。同社が徴収する料金は、1日250リットルを上限とする給水サービスの場合は月額120インド・ルビー(約227円)、使用量無制限の場合は月額1,000~1,200インド・ルビー(約1,890~2,270円)となっている。

さらにJuscoは、Jamshedpur市内の事業においてVeolia Waterのインド子会社と提携しており、外国企業の参入チャンスの一例を示してくれる。Veoliaが担当している主に、ランニングコスト削減や性能モニタリングにおけるコンサルティング活動である。このほかにVeolia Indiaは2002年以降、Chennai市の給水事業公社と、費用効果改善、人材教育、顧客管理に関するコンサルティング契約を締結している。

 

淡水化事業

淡水化事業の重要性は、インドの政治家の間でも認識され始めている。しかし、現在のところ、Lakshadweep市やAwania市における汽水処理事業をはじめとするわずかな事業計画が持ち上がっているだけである。原因は、インドでの淡水気事業の投資コストが他の飲料水生産方法に比べまだ高いことにある。一方、深刻化する水不足問題を考慮すると、将来的には関連プロジェクトの実施が増える可能性はある。

 

水関連設備メーカーにとってのビジネスチャンス

市場規模約60億ドル(約5,500億円)と言われるインドの水セクター。インド産業連盟(CII: Confederation of Indian Industry)の調べでは、同市場は年間15~20%の勢いで成長している。

水関連テクノロジーの輸入部門を支配しているのは、アメリカ合衆国ならびに欧州企業だ。この他、日本企業、そして最近では中国企業も進出し始めている。市場のポテンシャルの高さゆえ、いずれの製品分野においても国際競争が激しくなっているが、例えばドイツ企業はポンプや水栓の分野で強く、また浄水場で使われるフィルター装置などではUSA勢が優勢というような住み分けが存在していることも確かである。

なお、インドの法規では、一定の投資額を超えるプロジェクトには公募が義務付けられている。また、外国直接投資に関する規制はない。当該投資家は、海外からインドへの送金を受領後30日以内に所轄のインド準備銀行(RBI: Reserve Bank of India)支店に届出を行い、その後、海外投資家に株式を発行したあと、30日以内にそのRBI支店に必要書類を提出すればよい。

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