汚泥の重金属規制の強化に反対、EU下水汚泥指令改正案に関する意見公募で

EU下水汚泥指令(86/278/EEC)改正案について欧州委員会が実施した意見公募に2010年2月初めまでに寄せられた意見によると、農業に使われる下水汚泥に含まれる重金属に関する規制を強化することにEU各国や利害関係者が反対であることが分かった。今回の意見公募は、欧州委員会の委託でコンサルティング会社が作成した報告書(インターネットの以下のURLで閲覧可能)に基づき行われている。報告書では、同指令に関する複数の改正案が提示・分析されており、その中には重金属に関する規制値を厳格化すると共に特定作物への汚泥の使用を禁止する案も含まれている。
http://circa.europa.eu/Public/irc/env/rev_sewage/library?l=/draft_final_report/assessment_directivepdf/_EN_1.0_&a=d

複数の改正案の中で、ほぼすべての利害関係者の支持を得ているのが、同指令にある程度の変更を加える案である。これは重金属に関する規制を僅かに強化すると共に特定の病原体・有機化合物について新たな規制値を導入することを柱とするもので、コンサルティング会社が“最も政治的に受け入れられ得る”と評している選択肢である。この案についてドイツ環境省は、高水準の環境保護を“受容可能な”負担で提供する“あらゆる面で最善のオプション”としている。

 

ドイツ環境省は、検討されている重金属に関する規制厳格化をクリアできるのは自国の下水汚泥の“せいぜい”10~20%にとどまるとしており、他の複数のEU諸国も完全には順守できないと見ている。フランス政府や英国水道業界を含む複数の利害関係者は、農業への下水汚泥の使用を規制することは、EUの廃棄物関連法が定める廃棄物処理・処分の優先順位(焼却処分よりリサイクルを優先する)に違反することになると指摘している。農業への下水汚泥の使用を制限または完全に禁止すれば、汚泥が焼却または埋め立て処分されることになり、これがEUの廃棄物枠組み指令や気候変動関連法が定める環境目標と矛盾する可能性が出てくる。

利害関係者の多くは、規制強化が環境・健康面でもたらすメリットについて、もっと数量的分析が欲しいとしている。またREACHの対象となることを避けるため、下水汚泥は製品ではなく引き続き廃棄物と見なされるべきと警告する関係者も複数いる。今回の意見公募に寄せられた個々の意見は以下のURLから閲覧可能。
http://circa.europa.eu/Public/irc/env/rev_sewage/library?l=/stakeholders_comments&vm=detailed&sb=Title

 

2009年夏に実施された前回の意見公募では、寄せられた意見の半数以上で、指令の対象範囲を農業以外の分野と汚泥以外のバイオ廃棄物へと拡大すべきとの要望が示された。また寄せられた意見の5分の1以上が有機汚染物質に対する規制を支持するとした一方、病原体規制を支持するとの意見は15%未満にとどまっていた。
指令は2010年内にも改正されるかもしれない。

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