米環境保護庁、がんリスクを大幅に高めた無機ヒ素のアセスメント案を発表

米国環境保護庁(EPA)は2010年2月19日の連邦官報の通知のなかで、無機ヒ素のがんリスクの最新のアセスメント案を発表した。このアセスメント案は、予測されるリスクが大幅に引き上げられているので、米国内の大半の地域において上水道と環境浄化作業に費用のかかる影響を与える可能性がある。

同庁はまた、4月20日までパブリック・コメントを求めることにし、さらにこのアセスメント案をこの分野の専門家たちに査読してもらう(ピア・レビュー)ためにEPAの科学諮問委員会に提出するつもりである。この案の影響を心配している関係業界は、ピア・レビューを強く求めていた。

 

天然に存在する無機ヒ素は、上水道にとって最も一般的な問題の1つである。この物質はまた、土壌のなかに、また採掘された物質、肥料などのどこにでもある物質中の微量元素として、広く存在している。これが化学製品として使用されることは、年を追って大幅に減ってきたが、無くなったわけではない。

このアセスメント案では、EPAが設定した推定値より約17倍大きい推定「がん傾斜因子(CSF:cancer slope factor)」(あるいは「がん効力因子」)が示されている。CSFというのは、個人の一生の間に化学物質の特定の量によって発生するがんの増分リスクの尺度である。

無機ヒ素のアセスメントが、それへの低濃度暴露の結果起こる膀胱がんの予測されるリスクを大幅に高めるように見直されると、安全飲料水法(SDWA)に基づいて規制されている上水道と、資源保全回復法(RCRA)あるいは包括的環境対策補償責任法(CERCLA)の下で規制されている環境浄化のために設定されている最大汚染物質濃度(MCL)が一段と厳しくなる可能性がある。

業界団体に協力しているコンサルティング会社のPatrick Quinn社長は、EPAが正しいことをしたと認める必要があるが、ピア・レビューやコメントをしてもらうために適切な情報を提供しなければならないので、同庁の研究開発局(ORD)は、CSFの計算方法の詳細を発表する必要があると述べた。

 

2009年にEPAが台湾の井戸水によるヒ素への暴露を対象とした調査結果に基づいてCSFを20倍にすることを検討しているアセスメント案の情報がもらされたとき、EPAの支局員やEPA外部の専門家は、この台湾の調査以外の多くの調査で膀胱がんや肺がんのリスクについてそのように高いリスクを示したものはないと異議を唱えた。

ORDはこのような異議に対して、他の調査には台湾の調査にはない弱点があると応答した。

また、EPAの職員は、このようにCSFを見直すと、土壌や水のバックグラウンドの無機ヒ素の10~1000倍も低い濃度の無機ヒ素を浄化しなければならなくなるので、プログラムの規制を執行するのに非常に費用がかかることになるとコストの問題も取り上げた。

 

なお、EPAは2001年に、飲料水に含まれるヒ素のMCLを50 ppbから10 ppbに引き下げている。当時、同庁は技術的には3ppbでも可能だと考えたが、費用対効果を検討して10 ppbを選択した。しかし、多くの上水道事業者は、この10 ppbを満たすのに四苦八苦している。

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