EU加盟国のうち26カ国が地下水汚染に係る計158の化学物質および指標項目について基準を策定したことが、欧州委員会が2010年3月5日に発表した報告書により明らかになった。報告書は、欧州委員会が地下水保護指令(2006/118/EC)の定めに従って作成したものである。同指令は、2015年までに地下水を化学物質の観点から良好な状態にするとの目標を達成すべく、地下水に含まれる2つの汚染物質(硝酸塩と殺虫剤)についてEU共通の基準を定めている。また、その他の汚染物質については、各国が独自に基準を定めるものとし、その第一陣を2008年12月22日までに策定することとしている。
今回の報告書は、欧州委員会が各国から関連データを収集した2009年3月時点の状況を中心にまとめられている(2009年10月にデータを精査・更新する機会が各国に与えられた)。EUの全加盟国のうち、ギリシャを除く26カ国が報告要件を満たした。ただし、デンマークが提出したデータは不完全なものであったという。またポルトガルは自国内に汚染リスクに直面している地下水系は無いとし、基準を策定していない。
この報告書によると、硝酸塩については5カ国(オーストリア、アイルランド、ハンガリー、ラトビア、英国)がEU共通の基準より厳しい独自の基準を定めている。その範囲は1リットル当たり18~50ミリグラムで、地下水保護指令が推奨している水準となっている。また殺虫剤については6カ国が、より厳しい基準を定めている。
その他の汚染物質については、その土地ごとの条件(水文地質学的要素や環境上のリスクなど)を考慮して柔軟に基準を作成することが同指令により認められているため、EU域内各地で大きく異なっている。塩化物については22カ国、ヒ素、硫酸塩、アンモニアは20カ国、鉛は20カ国、カドミウムは19カ国、水銀は18カ国、透過性は14カ国、ニッケルは11カ国、銅、テトラクロロエチレン、トリクロロエチレンについては10カ国が何らかの基準を定めている。
なお地下水保護指令の第10条は、指令付属書IおよびIIの見直しを2013年1月までに行うよう定めており、欧州委員会はその準備に着手している。
報告書と地下水保護指令はインターネットの以下のURLで各々、閲覧可能。
http://ec.europa.eu/environment/water/water-framework/groundwater/pdf/EN.pdf
http://eur-lex.europa.eu/LexUriServ/LexUriServ.do?uri=OJ:L:2006:372:0019:0019:EN:PDF