インディアナポリスの上水道運営権、Veoliaから公益慈善基金に移転へ

インディアナポリス市と非営利公益慈善基金のCitizens Energy Group(Citizens)は2010年10月28日、同市の上下水道システムをCitizensが買い取る件に関連して、これら2者とVeolia Water(Veolia)を加えた3者が、現在Veoliaが保有している同市の上水道の運営権をCitizensに移転することで合意に達したことを明らかにした。市とCitizensは、これによって、安全とサービスの質を確保しつつ効率を最大限に高めることができ、ひいては利用者の負担軽減を実現することができるとしている。

インディアナポリス市の上下水道システムをCitizensに譲渡する件については、Ballard市長が提案し、市・郡議会がすでに2010年7月に承認している。これにより、将来、上下水を含めた水道料金を現在見積もられている額よりも25%安くすることが可能になり、また、4億2500万ドル(約354億円)以上が市にもたらされる見込みである。その資金を市は、橋、車道、歩道、公園などの重要インフラに投資したり、市内に何百とある廃屋を撤去したりするのに使うことにしている。

この上下水道システムの譲渡は、現在、インディアナ州公益事業委員会(IURC)の承認待ちである。IURCが承認するか否かの結論を下すのは、早くても2011年の春になる見込みだが、インディアナポリス市、Veolia、およびCitizensは、広範かつ誠実な交渉をかさねた結果、上水道の運営権を2011年にCitizensに移転することで合意した。その合意契約にもとづき、Veoliaは上水道の運営を、上下水道システムの譲渡手続が完了するまで続ける。ただし、この合意契約もIURCの承認が必要で、承認申請は2010年10月29日になされる予定である。

これについてCitizens Energy GroupのCarey Lykins社長兼CEOはこう述べている。「上水道の運営権を2011年にCitizensに移転することで、安全で質の高い上水道サービスをインディアナ州中央部のひとびとに確実に提供しつつ、年間6000万ドル(約50億円)の節約が可能になる。この節約分で、2025年までには、上下水を含めた水道料金を現在見積もられている額よりも25%安くすることができるだろう」

また、インディアナポリス市のChris Cotterill首席補佐官はこう述べている。「上下水道システムの譲渡について議会の承認が得られて以来、われわれはCitizensおよびVeoliaと力を合わせ、水道利用者、従業員、それにインディアナポリスというコミュニティにとってベストな合意案を練り上げてきた。コミュニティのすべてのステークホルダーのために運営権のスムーズな移転を保証する合意に達するべく、Veoliaが当市およびCitizensとパートナーシップ精神にもとづいて協力する決断をしたことを、高く評価したい」

Veoliaに2900万ドルの補償

Veoliaは、インディアナポリス市が2002年に上水道システムをNiSourceから買い取って以来、その運営をまかされ、さまざまな改善を実施するとともに、システムのグレードアップのために巨額の投資をおこなってきた。

今回の合意により、Veoliaは、2002年のインディアナポリス市と同社の契約にもとづいて2900万ドル(約24億円)の早期解約金を受け取ることになる。これは、Veoliaがもともと20年をかけての回収を見込んでシステムの改善のために自社の負担で投じた資金を補償するものである。だが、この解約金は上下水道システムの譲渡にともなって創設されるエスクロ口座から支払われるため、これが水道料金の値上げにつながることはない。

同市でおこなってきた水道事業の運営について、Veolia Water IndianapolisのDavid Gadis社長はこう述べている。「Veoliaは、従業員がこれまでになしとげてきたこと、また、彼らがインディアナ州中央部の上水道システムを改善してきたことを誇りに思っている。われわれの広範な研究開発努力と、新しい技術の導入によって、システムの効率を向上させ、より質のよい飲み水をつくり出すことができた」

Gadis社長はさらにこうつづける。「インディアナポリス市とCitizensとの今回の取引は市がインフラ改善のために必要な資金を得るためのまたとないチャンスをあたえるものであることを、われわれは認識している。われわれが最優先させてきたのは、安全で質のよい飲み水が得られる信頼性の高いシステムをインディアナポリスのひとびとに提供することだった。上水道システムとその関連サービスを、ひきつづきコミュニティの利益になるような仕方で譲り渡すという重要な仕事に、われわれは全社をあげて取り組んでいる」

下水道の運営はUnited Waterが継続

Citizensは、下水道システムの運営に関してはUnited Waterとインディアナポリス市との現在の契約を引き継ぐことにすでに同意している。これについてCitizensのLykins社長兼CEOはこう述べている。「2018年に終わるUnitedとの契約に書かれている下水道システム運営の内容は、利用者が期待していると考えられる効率向上と節約をCitizensが達成することを可能にするものだ」

議会の承認以来、Citizensはインディアナポリス市の上下水道ユーティリティを同社の企業グループに組み込む計画を慎重に練ってきた。Citizensは、上下水道ユーティリティのいくつかの機能を、3年のユーティリティ統合期間中に整理統合することを考えており、また、時期がくれば自然減による人員削減をおこなうことも計画している。

雇用の問題

CitizensのLykins社長兼CEOは、上水道事業と下水道事業の従業員らの雇用を維持することが上下水道システム譲渡をスムーズにはこぶための鍵であるとし、次のように述べている。「われわれは、インディアナポリスのコミュニティに上下水道サービスをいま提供している熟練したみなさんを必要としている。上下水道の従業員のみなさんをCitizensファミリーにお迎えするのをたのしみにしている。上下水道ユーティリティをCitizensに組み込むからといって、それで雇用が目に見えて減るわけではない。われわれが考えている費用節減は、ほとんどがサプライ・チェーンの効率化によるものだからだ」

上下水道ユーティリティの譲渡契約にも述べられているように、上水道システムの現在の従業員で交渉単位組合に属している者は全員、希望すればCitizensに雇用される。下水道システムの従業員のうち組合員は全員、Unitedが雇用をつづける。市が雇用している者については、公共事業局の34名と水道局の4名にCitizensが職を提供する。公共事業局と水道局のこれ以外の職員は市が雇用をつづける。交渉単位組合に属していない従業員については、統合プロセスのなかで必要人員を決めることになるが、非組合員の人員削減をおこなうとしても、それは可能な時期に自然減によって実施することになっている。

これについてLykins社長兼CEOはこう述べている。「上水道システムの従業員のみなさんがCitizensで仕事をつづけられる機会を提供できるのは、よろこばしいことだ。彼らといっしょに仕事をすることで、新しいCitizensが生まれ、それにより、すばらしいコミュニティにさらに価値を付加する公益慈善基金としてのわれわれの将来がいっそう拓けてくる」

上下水道ユーティリティを譲渡するという提案をBallard市長が2010年3月10日に公表して以来、市長と市の幹部、それにCitizensは、この提案のあらゆる面について市民がじゅうぶんな情報を確実に得られるよう、透明性を第一に考えてきた。市とCitizensはこれまで、主要なステークホルダー・グループと60回以上の公開のフォーラムや会合をかさねてきた。さらに、上水、雨水、下水のシステムの運営に関して貴重な情報を提供してくれる専門家グループらの意見にも一貫して耳を傾けてきた。

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