最近の金価格の持続的上昇の影響を受け、河南省霊宝県では、水銀法など旧式の精錬法による金の精錬が復活するきざしを見せている。これに対して、環境法規執行担当者が調査した結果、一部の零細企業が水銀法による金精錬の開始を考えていることが判明した。このため特に調査を行った結果、ある企業の汚水から基準値を超える水銀が発見された。水銀法がいったん開始されたら、多くの人たちがそれにならい、想像を絶する水質汚染を引き起こすことになる。
この種の行為に対して、法律の執行において、どの法律条項を適用すべきか、法律執行担当者の間で意見が分かれた。ある人は(1)「水質汚染防止法」第74条を適用すべきだと言い、(2)ある人は第76条の(二)を適用すべきだと言い、(3)またある人は第78条を適用すべきだと言った。
筆者(河南省霊宝市環境保護局所属の張武丁氏)は、これら3つについて、いずれも一定の道理があると考えるが、正しく処罰するためには、以下の事項を明確にしなければならないと考えている。
(1)条項が競合する場合は、どの条項でもいいというわけではなく、また、自分の所属先の立場から最も重いものを選ぶということも適当ではなく、最も適切なものを選ぶべきである。当然、地方法規に規定がある場合は地方法規を適用しなければならない。
(2)処罰は既に把握済みの事実と証拠と結びつけ、前後が整合性を持たなければならず、証拠が連続していなければならない。
例えば、零細精錬企業について検査を行うときは、「水銀の棚が撤去されていない」「造作規程に従い水サンプルを採取」などの記録が現場検査記録で出現する可能性があるが、どのように記録されるかは、それ以後の法執行にとって非常に重要となる。
前者は違法に旧式のプロセスを使用したということを示しており、マクロ経済調整部門によって、水質汚染防止法第77条「生産、販売、輸入、使用が禁止された、水環境を著しく汚染する水環境設備リストの中にある設備を生産、販売、輸入または使用した場合、あるいは、採用を禁止された、水環境を著しく汚染するプロセスリストに掲載されたプロセスを採用した場合は、県クラス以上の人民政府のマクロ経済調整部門が是正を命じ、5万元(約65万円)以上、20万元(約260万円)以下の罰金を課する」という規定が適用される。
後者は、違法に基準値を超過した汚水排出であり、環境保護行政主管部門によって、水サンプルの測定結果が基準値を超過しているか否かにより、水質汚染防止法第74条第1項「排出した水質汚染物が国または地方の定めた水質汚染物排出標準を超過した場合、または重点水質汚染物排出総量規制の指標を超過した場合は、県クラス以上の人民政府の環境保護主管部門がその権限に照らして期限付き対策を命じ、納付すべき汚染排出費の額の2倍以上5倍以下の罰金を課する」を適用するので、両者の性質ははっきりと違う。
(3)違法行為をはっきりと分けて扱わなければならない。水域に可溶性水銀を投棄した者については、環境保護行政主管部門が「水質汚染防止法」第76条第1項(二)の「水域に 劇毒廃液を排出し、または水銀、カドミウム、ヒ素、クロム、鉛、シアン化物、黄リンなどの可溶性劇毒廃液を排出、投棄、または地下に直接に埋めたものについては、県クラス以上の人民政府の環境保護主管部門が違法行為の停止、期限付き是正措置、汚染の除去を命じ、5万元(約65万円)以上、50万元(約650万円)以下の罰金を課し、期限が到来してなおかつ対策措置をとっていなかった場合は、環境保護行政主管部門が対策能力を有する事業所を指定して対策の実施を肩代わりさせることができ、それに必要な費用は違法者が負担する」の規定を適用する。
基準値を超過していない場合で(基準値を超過しているときは上述の74条を適用する)、汚水処理施設を放置しまたは勝手に撤去した場合は、「水質汚染防止法」第73条の「水質汚染物処理施設を正常に使用せず、あるいは環境保護主管部門の認可を経ずに水質汚染物処理施設を撤去または放置した場合は、県クラス以上の人民政府の環境保護主管部門が期限付きで是正を命じ、納付すべき汚染排出費の額の1倍以上3倍以下の罰金を課する」を適用する。情況を明確にしなければ対処方法を決められず、法の正しい適用ができない。
従って、筆者の考えでは、まず水サンプル測定レポートに基づき、違法に基準値を超過して汚染排出した企業に水質汚染防止法第74条を適用し、納付すべき汚染排出費の2~5倍の処罰をすべきである。河南省内では、河南省水質汚染防止条例第59条第1項を適用し、「本条例第24条の規定に違反し、直接または間接的に水域に水質汚染物を排出し、規定の排出標準を超過した場合、または重点水質汚染物排出総量規制指標を超過した場合は、県クラス以上の人民政府環境保護主管部門が期限付き是正を命じ、同時に前年の納付すべき汚染排出費総額の2倍以上5倍以下の罰金を課する。」 次に、水銀の棚を撤去していない情況が存在するかどうかを一歩進んで調査しなければならない。もし存在したら、行政処罰法第15条「行政処罰は行政処罰権限を有する行政機関が法定職権範囲内で実施する」に基づき、人民政府経済マクロ調整部門にすみやかに通知し、淘汰すべき旧式のプロセスをその部門が法に基づき取り締まるようにし、決して肩代わりして環境保護部門が処罰するようなことをしてはいけない。職責を履行し大衆の利益を擁護するにあたっては、法を厳格に執行すると同時に、自らの部門の法執行範囲からはみ出てはならず、おのおのの職責によって履行しなければ、みだりな作為ということになり、してはいけないことである。法によって行政を行うということは、行政法執行部門による一種の違法行為によって別の違法行為を制止するということもしてはならないということである。