2011年11月初めに公表される予定の欧州委員会の報告書によれば、1991年都市下水処理指令(91/271/EEC指令)の実施が依然として順調に進んでいないという。これは2011年10月25日にブリュッセルで開催された欧州水協会(EWA)の第7回年次総会で欧州委員会の代表者から明らかにされたものである。ちなみにこの年次総会のテーマは「効果的な都市下水処理:水枠組指令(WFD)を成功裡に導くために達成しなければならない重要な課題」であった。
この欧州委員会の代表者は、この1991年指令の実施を妨げている問題点として、政策面でのサポートと資金面でのサポートが欠如していることを挙げた。また、同代表は、いざ下水処理施設が地元に建設されるとなると自分たちの地域に建設されるのはいやだといった自分勝手な精神性が自治体の間に一貫して見られるとも指摘した。
2年前の2009年8月に欧州委員会が報じた際にも、加盟国間でこの指令への順守対応に大きな隔たりが生じていた。同指令が円滑に実施されなければ違反行為が重なる元となり、こうした違反行為は極めて重大な犯罪であると欧州委員会は批判している。
一方、欧州委員会としては、来年2012年度の計画には加盟国に新たな報告義務を課すことはしない代わりに、報告が容易にできるよう制度を修正し、加盟国間で情報を共有し最良事例(ベスト・プラクティス)について学んでもらいたいとしている。
この1991年都市下水処理指令は、2000人以上の住民がいるすべての居住地域に下水の収集と処理に対して大きな投資をもたらしてきたものであり、水枠組指令(WFD)の目標を達成する上で重要な部分を成すもので、WFDの附属書VIに規定されている重要施策のひとつとして組入れられているものである。
この下水処理指令の目的は、都市下水の排出や特定の産業施設からの廃水による汚染から環境や人の健康を保護することであり、次のような汚染水の収集、処理及び排出について規定している。
- 家庭排水
- 混合廃水
- 特定の産業施設からの廃水
なおEWAは、EUをはじめ欧州各国で水環境の管理・改善に関する活動団体が加盟する、非政府・非営利団体で、国際会議、ワークショップなどを通して、欧州での上下水道および付随する廃棄物など、水環境に関する問題を技術的、政策的に検討する機会を提供している。