およそ190万人のアメリカ人に職をもたらし、2650億ドル(約20兆7000億円)の経済効果をもたらす方法とは? 答は、上下水道インフラの改善である。この答を導き出す報告書を、2011年10月4日、アメリカのグリーン・エコノミーNPO、Green For Allが公表した。Water Works: Rebuilding Infrastructure, Creating Jobs, Greening the Environment(水道事業:インフラの再建、雇用の創出、環境の浄化)と題するこの報告書は、Green For AllがAmerican Rivers、Economic Policy Institute、およびPacific Instituteとの協力のもとに作成したもので、調査・研究にはロックフェラー財団が資金を提供した。以下は、この報告書の概要である。
1884億ドルの投資で2650億ドルの経済効果と190万人の雇用創出:
毎年、越流によって8600億ガロンの未処理の下水がアメリカの水系に流れ込んでいる。この量は、ペンシルヴェニア州全体を深さ1インチの下水で覆うことに匹敵する。しかし、雨水や汚水の管理のためのインフラへの投資は遅れており、増えるどころか1975年のピークから3分の1ほど減少した。
報告書は、環境保護庁(EPA)が雨水の管理と水質の保全のために必要であるとしている水インフラへの1884億ドル(約14兆7200億円)の投資に着目している。これだけの投資をすれば、2650億ドルを経済に注入する効果があり、それによって関連部門で直接と間接を合わせて約130万人の雇用を創出し、さらにその波及効果で56万8000人の雇用が生まれると報告書は述べている。
いまが投資のチャンス:
報告書はまた、いまがこの投資の絶好のチャンスだと指摘している。人口増と9.1%の失業率に対処するのに必要な雇用が、景気の悪化で1110万人分も不足しており、いままさに求められているのは雇用の創出である。さらに、このきわめて重要なインフラ改善のための金融費用は歴史的な低レベルにあり、依然として苦闘をつづける経済は、建設コストが好景気時よりもずっと低いことを意味している。そうしたなか、従来システムよりも自然のシステムに近いグリーン・インフラへの投資が解決策の一部として考えられており、これは、上に挙げた経済的効果に加え、河川の汚染の低減や、エネルギーの節約、都市の緑化面積の拡大といったメリットをもたらしてくれる。
この報告書について、Green For AllのPaedra Ellis-Lamkins CEOはこう述べている。「環境を浄化し、ひとびとに仕事を提供することが、これまでもつねにグリーン・エコノミーのバリュー・プロポジションだった。この報告書は、きれいな水を確保し、景気を改善し、ひとびと――特に低所得労働者――を職場にもどす大きなチャンスがあることを明らかにしている」
Pacific Instituteで「持続可能性と正義のためのコミュニティ戦略プログラム」の共同リーダーを務めるEli Mooreは、こう述べている。「わが国の上下水道システムは劣化しており、これが健康と環境に悪影響をあたえている。上下水道への投資により、われわれの貴重な水資源の長期的持続可能性を高めることができる」
また、American RiversのGary Belanはこう言う。「アメリカの上下水道インフラの劣化は、水質、河川の状態、それにコミュニティに直接の影響がある。自然に逆らうのではなく自然と協調するタイプの、よりスマートで費用対効果性のより高い水インフラに投資することにより、われわれは河川とコミュニティの環境を改善し、その過程でひとびとを職場に連れもどすことができる」
さらに、Economic Policy InstituteのJohn Irons研究・政策担当役員は、こう述べている。「いまこそ投資の時だ。1日待つごとに、経済への負担が増し、アメリカの家庭の健康と幸福が損なわれていく」
この報告書は、http://greenforall.org.s3.amazonaws.com/pdf/Water-Works.pdfで閲覧することができる。また、著者らへの質問や追加情報の請求は、1-(510)663-6500、内線336でMary Creasmanが受け付けている。