2012年1月31日、欧州委員会が水枠組み指令(2000/60/EC)の附属書Xにて規定されている優先物質リストに新たに15物質を追加するための改正案を提出した。また、既存優先物質の環境基準や取り締り体制の見直しも提案された。
新規優先物質の特定
新たに優先物質に特定された15の化学物質は以下のとおり。
- 農薬:アクロニフェン、ビフェノックス、シペルメトリン、ジコホル、ヘプタクロル、キノキシフェン
- 殺生物剤:シブトリン、ジクロルボス、テルブトリン
- 工業化学品:ペルフルオロオクタンスルホン酸塩(PFOS)、ヘキサブロモシクロドデカン(HBCD)、ダイオキシン、ダイオキシン様ポリ塩化ビフェニル(PCB)
- 医薬品:17α-エチニルエストラジオール(EE2)、17β-エストラジオール(E2)、ジクロフェナク
このうち、有毒で、環境残留性、生物蓄積性の高い6物質(ジコホル、ヘプタクロル、キノキシフェン、PFOS、HBCDD、ダイオキシン、ダイオキシン様PCB)は優先有害物質に指定される予定で、20年以内に地表水への放出が禁止される。加盟国は既存の33物質については2015年、新規15物質については2021年までに環境基準指令(2008/105/EC)にて規定された環境基準(EQS)を達成する必要がある。
既存優先物質の見直し
また、既存優先物質についても以下の見直しの提案がなされている。
- アントラセン、フルオランテン、ナフタレン、多環芳香族炭化水素、ポリ臭化ジフェニルエーテル、鉛、ニッケルの水質基準をさらに強化
- フタル酸ビス(2-エチルヘキシル)(DEHP)や除草剤のトリフルラリンの分類が優先有害物質へと変更
- フルオランテン、多環芳香族炭化水素、ポリ臭化ジフェニルエーテルについて生物相基準を新たに規定または強化
- ヘキサクロロベンゼン、ヘキサクロロブタジエン、水銀の水質基準が削除、生物相基準については堅持
取り締り体制の強化
さらに、欧州委員会は、汚染化学物質のモニタリングや報告、将来EUレベルでの規制が必要になる可能性のあるその他の汚染物質濃度についてのデータ収集案を提示した。今後、水枠組み指令および環境基準指令の改正案が欧州理事会と欧州議会において審議、採択される見込みである。