ベトナムで環境保護を目的とした産業排水に対する課徴金を支払う企業の数が減少していることが最近の調査により明らかとなった。
調査はハノイ市の企業453社を対象としてハノイ経済大学が実施した。調査を始めた当初、76社の企業が排水課徴金の支払いをしていたが、2年後の調査ではそれが23社となり、徴収された排水課徴金総額も6億8300万ドン(約253万円)から6200万ドン(約23万円)に減少していた。
また、ホーチミン市では、排水課徴金を支払う企業数は一時増加傾向をみせたものの、その後減少に転じている。調査を行った最初の3年間には、排水課徴金を支払う企業が129社から1851社に増加したが、その後594社へと減少した。
天然資源環境省(MONRE:Ministry of Natural Resources and Environment)の下部組織である天然資源環境戦略政策研究所(ISPONRE:The Institute of Strategy and Policy on Natural Resources and Environment)も排水課徴金が当初の予想額よりもはるかに少ないことを認めている。ハノイ市やホーチミン市など大都市で徴収された排水課徴金は予想額の20%から30%程度に留まっており、企業が排水課徴金を支払わないために地方政府が環境問題を解決するのに十分な資金を確保できていないという事態が起きている。
企業が排水課徴金の支払いを回避する傾向に対し調査員は、排水課徴金そのものより排水課徴金未払いに対する罰金の額が少ないことを要因として挙げている。また、調査団のリーダーであるLe Ha Thanh氏(ハノイ経済大学都市環境科)は、排水課徴金に関する政令第67号(Decree No. 67/ 2003/ND-CP)に主な問題があると指摘している。
調査対象となった企業の半数以上が排水課徴金制度に対し複雑すぎると話しているのにも関わらず、当局は汚濁指標を多く設け過ぎており、結果として排水課徴金は企業の経済力では負担できないものとなっている。そのため、排水課徴金の徴収に関して専門家は、靴製造業や化学工業、染色業など、最も深刻な被害を引き起こす分野の大手企業に限るべきだとしている。また、汚濁指標については今後、主に化学的酸素要求量(COD:Chemical Oxygen Demand)や全浮遊物質(TSS:Total Suspended Solids)、数種の重金属類に絞られるだろう。
MONREのBui Cach Tuyen副大臣によれば、同省は2015年までに環境保護に係る資金を政府予算の2%以上に引き上げるといった提案をする予定だという。また、同省は、投資家に対して総投資資本の10~20%の額を環境インフラのために費やすよう求める法令を政府に提案することを計画している。