アジア開発銀行(ADB)と、シンガポール国立大学 リー・クァンユー公共政策大学院 水政策研究所が共同で作成した報告書「都市の水管理に関する好事例(Good Practices in Urban Water Management: Decoding Good Practices for a Successful Future)」が、2012年7月3日に公表され、この中でアジアの8つの都市が取り挙げられた。同報告書では、それらの地域における、浄水への接続や利用に対する当局からの助成金について言及し、アジアの他地域でも、低所得家庭に浄水を供給可能となるような水道事業の改革が今後必要であると述べられている。
同報告書はシンガポール国際水週間にて公表されたが、シンガポールは水管理の好事例の1つであり、そこから学ぶことは多い。例えば漏水率が低い、持続可能な水管理に対して政府が強く関与している、配水費と管理費を含んだ価格決定を実施しているなどである。また、水事業を担っている公益事業庁(PUB)では革新的技術を模索している。
漏水による損失:
ADBナレッジマネジメント及び持続可能開発担当のBindu Lohani副総裁によると、アジア・太平洋地域では重大な水危機が増す一方で、漏水と効率性の悪さによって許容し難い量の水が失われているという。同氏は、これを半分に削減することで新たに1億5000万人に浄水を供給することが可能になると述べている。ADBの推計では、アジア・太平洋地域において1年を通して無駄になっている水の量は290億m3にのぼり、90億ドル(約7020億円)以上の損失に繋がっている。
漏水に関して、同報告書では「行方不明水(UFW:unaccounted for water)」という用語を用い、UFWの割合を低下させることが、上水供給の効率性にとって重要であると述べられている。現在、アジア・太平洋地域での現在のUFWは60%に達しているが、これを20%未満に下げることは実現可能な目標であるという。実際にカンボジア プノンペン市は2008年に、わずか6%にまで下げることに成功している。
漏水の問題以外では、都市部での水事業を効率よく実施する上での重要なテーマとして以下の6つが取り挙げられている。
- 民営化の説明責任
- 経済的な持続可能性
- 水供給や廃水処理などを包含した総合的な水管理
- 運営スタッフの生産性
- 政府、事業体、社会の連携
- 都市部の貧困層への浄水供給に関する包括的アプローチ