英国政府、企業向け上下水道事業者を選択可能にする抜本的な改革法案を議会に提出

英国環境省は2012年7月10日、同国の上下水道事業のあり方を抜本的に改革する水法案を議会に提出した(以下のリンクに、法案の現物)。Caroline Spelman環境大臣は、「すべての企業やその他の組織は初めて、自ら使う水の供給や下水処理の事業者をあれこれ調べて、自らの判断で変更できるようになる」と述べた。
http://www.official-documents.gov.uk/document/cm83/8375/8375.pdf

この法案が成立すれば、イングランドに所在する120万のすべての企業と公共団体は今後、上下水道事業者を自由に選択できるようになる。環境省によると、水事業者間の競争を通じて上下水道料金が安くなり、企業や公共団体の業務効率化にも資することになる。また、個々の企業のニーズに合った上下水道サービスを入札にかけることも可能になるという。小売市場を開放する現実的な期日は、2017年4月になりそうである。

イングランドとウェールズの上下水道事業は、1989年に完全民営化されている。現在、上下水道会社10社、上水道専門会社11社の計21社が事業を展開している。しかし、他の公益事業部門と異なって、水部門では現在、2003年水法に基づき、大口契約の企業しか水供給業者を選択できないのが実情である。一般の企業顧客はたいてい、地域独占的な水企業による上下水道サービスを受けている。大半の企業は、自社のニーズに合う供給事業者やサービスを選べず、既存の事業者を変更したい顧客から不満が出ていた。

そこで今回の法案はまず、上下水道市場に参入したい新規事業者にとって障壁となっている現行の規制を撤廃するものである。現在、新規参入者は、市場に入る前に、上記の最大21社の水会社と条件面で交渉しなければならない。しかし、今回の改革を実施したあかつきには、水サービス規制局(Ofwat)が標準的な取引条件を定め、水会社に従わせるようにするので、新規参入者は水会社といちいち交渉する必要がなくなる。また、既存の水会社も、業務拡張を検討するいい刺激を受ける。

本法案はまた、産業界内部の大口水取引も円滑にするものである。水安全保障問題に対する長期的な解決策を見つけるため、水会社も積極的に協力できるようになる。

調査研究によると、水市場を開放し、上下水道事業者を企業が選択できるようになれば、30年間で20億ポンド(約2,400億円)の経済的利益が発生する。すでに同様の改革を推進しているスコットランドでは、公共部門だけで、向こう3年間に約2,000万ポンド(24億円)の経費が節減できる、と予想されている。

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