ハンガリーでは、300以上の市町村に住む80万人以上の人々が、許容量を超えてヒ素を含む飲料水を摂取している。また、ヒ素以外の飲料水の水質問題を抱える村落の数も、全国で550を超えている。
ヒ素濃度の高い飲料水の摂取は、癌のリスクを高めるという。しかし、そうした脅威にさらされている人々の80%は、そんな問題があることすら知らないのが現状である。
欧州委員会は、2012年12月25日という期限を設けて、飲料水に含まれるヒ素、ホウ素、およびフッ素の量をEUの制限値未満に引き下げることをハンガリー政府に求めた。しかし、報道によると、同国の飲料水の水質改善プログラムは大幅に遅れている。12月末までに、安全な飲料水を十分に確保できる集落の数はわずか92。そのほかの集落では、暫定的な給水策が必要となる。この問題を所管するハンガリー当局(Ministry of Home Defense)は、12月26日から給水車を使って給水を開始するとしている。
いっぽう、暫定策は家庭でも講じることができる。たとえば濾過は、地方政府が集中的に行うだけでなく、家庭でも濾過装置やより安価な濾過機能付きの水差しを購入して実施することが可能である。ただし、対策が必要な家庭の86%は濾過システムを用いていない。また、対策が必要な家庭の37%は水を煮沸して子どもに飲ませているが、煮沸でヒ素を取り除くことはできない。このことは、子どもや妊婦にとっては非常に重要である。
自治体の首長のなかには、水道以外の方法で給水しなければならないことに気づいている人たちもいる。しかし、住民が健康に良くないことを知りながら水道水を使うことはわかっているので、首長たちは別の給水策を講じることは意味がないと考えている。
さまざまな村落のプロジェクトで構成される水質改善プログラムは、2007年、環境・エネルギー運用プログラムの枠組みにおいてスタートした。問題はプログラムの遅れだが、プロジェクトの所有者たちは、プロジェクトの進行を早めたいと考えている。計画によると、これらのプロジェクトのほとんどは2013年に投資にかかわる作業を完了する。プログラムの最終期日は2015年である。
こうした飲料水事情も、ハンガリーの首都ブダペストでは大きく様相が異なっている。ブダペストの飲料水は安全で価格も安い。最近も、「水道水を飲もう」キャンペーンの一環として、首都4地区で水道水の水質試験を行ったところ、いずれの地区も政府の水質要件(政令201/2001(X.25))を満たしていることが明らかになった。
特に、ブダペストの飲料水は、ボトル入りミネラルウォーターと同じくらいのカルシウムとマグネシウムを含んでいるが、価格はミネラルウォーターより安い。ブダペストの家庭は、水道水を使うことで多額の水代を節約できるのである。