米国の水道事業、整理統合へ進むという見かたが大勢

米国の大手会計・税務・顧問サービス会社、WeiserMazars LLPは2012年11月19日、同社としては初の水道事業に関する年次報告、2012 U.S. Water Industry Outlook(2012年米国の水道事業の展望)をウェブサイトで公表した。これは水道事業者を対象としたアンケート調査の結果をまとめたもので、それによると、今後3年ないし5年間に水道事業が向かう方向を尋ねた問いに対し、回答者の71%が、向こう5年のうちに大規模な完全民営化ユーティリティによる中小ユーティリティの買収というかたちでの整理統合が大きく進むだろうと予測している。また、水道事業が細分化されていることが、顧客サービスの質やインフラ改善のための資金調達能力にマイナスの影響をあたえているという認識をほぼすべての回答者が示している。

整理統合を促す要因――外的要因とインフラの老朽化

民営化や半民営化による水道事業の整理統合が進むという見かたは、しばらく前からあった。しかし、水道というきわめて重要な公共サービスを民営化することには利用者の抵抗感が強く、実際には整理統合はほとんど進まなかった。ところが、外的要因がこうした事情を変えつつある。地方自治体にとっては資金の調達がますます難しくなり、増税に頼るほかなくなってきているが、この選択肢はあまり歓迎されない。そこで、多くの州では、官民パートナーシップを法制化して、整理統合への道を整えようとしている。

こうした事情について、WeiserMazarsのJerome Devillers水インフラ・プロジェクトファイナンス部長はこう述べている。「水道事業には、この数年間にかなりの民間資金が流れ込んだ。ほかの投資対象より安定性があると見込んでのことだ。われわれの調査結果は、水道事業の整理統合の機が熟したことを示している」

これまでいくつもの報告が、米国の水インフラが危機的なほどに老朽化していることを示しているが、今回の調査でもそれを裏づける結果が出ている。すなわち、回答者の45%が自分の所属する水道事業体の施設が「古い」か「きわめて古い」としたのに対し、「新しい」とした回答者はひとりもいなかった。水インフラの崩壊の危険性を察知して、官民の水道事業体の50%が、設備投資額を最大で5%増額させている。回答者らは、上下水道インフラへの設備投資額が2040年まで増加をつづけると予想している。しかしその一方で、インフラ改善の必要性と設備投資額とのギャップは、投資額の増加よりも速いペースでひろがっていくと考えられている。

WeiserMazarsの2012 U.S. Water Industry Outlookについて

WeiserMazarsの2012 U.S. Water Industry Outlookは、水道事業に的を絞った最初の調査報告書である。この調査は、経営状態、決算結果、経営コストのトレンド、設備投資などのほか、水道事業の未来を左右するいくつかの要素にも焦点を当てている。アンケートの回答者は水道事業を横断的に見るのにふさわしく、55%が民間企業に所属し、77%が管理職で、うち55%が経営幹部、22%が中間管理職となっている。この調査にあたって、WeiserMazarsは水道事業者の現職および元幹部らから成る諮問委員会を組織し、その協力と助言のもとにアンケートを実施した。WeiserMazarsはまた、調査の代行などもおこなっている独立した経営コンサルティング会社C E Effron Companyに、この調査のデータ分析を依頼した。

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