中国環境保護部および国家質量監督検査検疫総局は共同で、2012年11月、「紡績捺染産業水汚染物排出基準」、「糸織工業水汚染物排出基準」、「毛紡績工業水汚染物排出基準」、「麻紡績工業水汚染物排出基準」の4項目について新たな排出基準を公布した。これら4つの新基準は、「中国人民共和国環境保護法」および「中華人民共和国水汚染防止法」に基づき、水質汚染の防止、環境保全、市民の健康の保障を目的として制定されたもので、2013年1月1日に施行される。
各基準の概要
今回公布された4つの基準のうち「紡績捺染工業水汚染物排出基準」は既存の基準を更新するものであるが、その他の3つの基準は全く新しい基準である。これら4つの基準の実施により、中国での天然繊維の紡績加工過程をカバーすることができるようになっている。「紡績捺染産業水汚染物排出基準」は、前処理、ならびに綿、麻、毛、糸及び化繊の捺染生産プロセスにおける水汚染物の排出に対応する。「糸織工業水汚染物排出基準」、「毛紡績工業水汚染物排出基準」、「麻紡績工業水汚染物排出基準」は、それぞれ繭加工・糸織関連生産プロセス、洗毛関連生産プロセス、麻脱膠関連生産プロセスにおける水汚染物の排出に対応する。
基準値については、これら4つの新基準は、水汚染物排出における要求を全体的に厳しくし、環境リスク防止を強化している。そのうち、「紡績捺染工業水汚染物排出基準」では、COD、BOD、浮遊物、アンモニア性窒素などの指標に関して排出制限値が厳しく制定され、一部の特殊地域においては、更なる厳格な排出制限値の適用を規定している。また、捺染・漂白などの生産プロセスにおいて、「紡績捺染工業水汚染物排出基準」では、硫化物、アニリン類、二酸化塩素などの業界特有の項目への基準要求を厳しくし、さらに、吸着可能な有機ハロゲン(AOX)指標を新たに追加した。また富栄養化対策として、新基準では、総窒素、総リン指標を加えた。
糸織、毛紡績、麻紡績関連の3つの基準は、各種類の繊維生産加工プロセスの特徴に対して業界特有の汚染物を指定し、関連要求を厳しくしている。
企業の対応スケジュール
4つの新基準のいずれも2013年1月1日からの実施となる。新規企業が基準値を満たさなければならないと規定しているが、既存企業には一定の移行期間を設け、その移行期間における特別排出基準も各「基準」で明確にし、2015年1月1日までに新規企業と同様に基準値を達成できるよう要求している。
世界一の中国紡績産業
中国は世界最大の紡績品の生産および加工地であり、国内の綿糸、綿布、ナイロン、絹製品、化繊製品と服装など主要製品の生産量はいずれも世界一位となっている。一方、近年の急速な産業発展と並行して、紡績産業が原因となり、廃水中の汚染物質濃度が大幅に上昇し、環境問題が日々叫ばれている。2010年の統計では、紡績産業由来のCODおよびアンモニア性窒素の総排出量は、それぞれ30.1万トンと1.7万トンであったが、これは工業全体の排出総量の8.3%と7.1%を占め、工業界全体で4番目に悪い結果である。
環境保護部・科学技術基準司の関係者によると、中国では今まで、糸織工業、毛紡績工業、麻紡績工業の排水特性に特化した排水基準がなく、工業排水における総合排出標準である「汚水総合排出基準」(GB8978-1996)への遵守対応を行っていたという。
新標準概要
基準名 | コード | 実施日 | 注釈 |
---|---|---|---|
紡績捺染工業水汚染物排出基準 | GB 4287-2012 | 2013年1月1日 | 既存「紡績捺染工業水汚染物排出基準」 (コード:GB 4287-1992)を代替するものである。 |
糸織工業水汚染物排出基準 | GB 28936-2012 | 2013年1月1日 | 新基準 |
毛紡績工業水汚染物排出基準 | GB 28937-2012 | 2013年1月1日 | 新基準 |
麻紡績工業水汚染物排出基準 | GB 28938-2012 | 2013年1月1日 | 新基準 |
【関連URL】
なお、原文は下記URLにて閲覧可能である(中国語)。
<環境保護部:紡績工業水汚染物排出基準公布>
http://www.sn.xinhuanet.com/2012-11/26/c_113805158.htm
「紡績捺染工業水汚染物排出基準」等四つの国家汚染物排出標準の公布に関する公告
http://www.zhb.gov.cn/gkml/hbb/bgg/201211/t20121109_241796.htm