中国国内メディアによると、北京市では、汚水処理費の行政事業性の徴収基準及び再生水の価格を段階的に引き上げる予定であり、北京市発展改革委員会が2013年6月に案を出す予定だという。また、同メディアによると、北京市は企業に対し汚染源の管理強化を実施する意向を示しており、今後より厳しい工場排水の標準を作成する見通しだという。関連標準として北京市は「水質汚染物排出標準」をできるだけ早期に制定する方針であり、2014年の実施に向けて2013年10月にはドラフトを策定する見込みだと報じられている。
汚染対策3年行動計画
北京市では「汚水処理及び再生水利用施設建設の3年行動計画(2013~2015年)」を打ち出している。この計画は、汚水処理施設及び再生水利用施設の建設を加速することを主眼としたもので、分野ごとのプロジェクトを実施することが示されている。劉斌・北京市水務局副局長の説明によれば、汚染対策3年行動計画のために、約260億元(約4200億円)の工事費が必要と見積もられており、その内訳は、北京市中心部で約180億元(約2900億円)、郊外で約80億元(約1300億円)だという。中国国内メディアは、この260億元余の調達方法について、劉斌は次の4つの方法を明らかにしたとしている。(1)普段納める汚水処理費、(2)政府による補助金と今後の補助金増額分、(3)一部企業が資金を投入して汚水対策事業に参入することが希望されること、(4)融資を利用して資金を調達する方法。
経費の源泉の1つである汚水処理費*について、林克慶副市長は、行政事業性の汚水処理費の費用徴収基準と再生水の価格を段階的に引き上げると表明した。汚水処理費がサービス費をカバーできるまでは、既存の汚水処理施設と再生水利用施設のインフラ建設のための政府の投資、財政運営経費補助、汚水処理行政費用徴収を総合的に使用し、汚水処理及び再生水利用の公共サービス費用にあてる。サービス費は汚水排水コスト、再生水運営コスト及び合理的利益を含むのが妥当である。
計画に基づき、北京市発展改革委員会は6月に行政事業性の費用徴収基準及び再生水の価格を段階的に引き上げる案を作成し、時期を見て実施する。また、北京市財政局が制定する「北京市汚水処理費徴収使用管理弁法」は2013年10月に意見募集稿を完成し、2014年6月に公布実施する予定である。
排出源での汚染抑制
林克慶副市長は、汚染排出をその源から規制するメカニズムを確立しなければならないと強調した。すべての開発建設プロジェクトは、排水認証を受けなければならず、排水認証がプロジェクトの環境影響評価の要件となる。
都市の発展の動きをすみやかに把握し、排水と再生水についての建設計画を調整しなければならない。下流に公共のパイプ網及び汚水処理施設が無い場合は、汚水処理施設を付帯して設けなければならない。汚水処理施設を付帯させない各種建設プロジェクトについては、環境保護局が環境影響評価の認可を行わず、計画委員会・発展改革委員会がプロジェクトの計画を認可せず、住宅建設局が竣工の検収を許可せず、使用開始を許可しない。「排水論証規程標準」と業務フローの意見募集稿が10月に作成され、2014年6月に公布実施される予定である。
汚水処理と再生水利用のための建設プロジェクトは原則として特別扱いにし、本体と並行して審査を進め、審査期間を短縮する。同時に、企業による汚染源の管理を強化し、一層厳格な工場排水の標準を作成し、北京市の「水質汚染物排出標準」をできるだけ早期に制定し、排出標準と水質環境標準がマッチするようにする。この標準は初稿を10月に完成させ、2014年6月に公布実施する予定である。
清河・涼水河などに臨時の汚染対策措置を設置
汚水が処理されずに直接河川に入るのを阻止し、水質環境を早急に改善するため、2013年、計画中の汚水処理場が完成し操業を開始するまでに、臨時の汚染対策を実施する。これには、既存の汚水処理場の潜在能力を発揮させること、都市と農村の境界部にある集落、住宅地、河川の本流・支流の重点の汚染排出口に臨時の汚染対策施設を建設することが含まれる。これにより、北京市の汚水処理能力は一日当たり19万立法メートル増加する。
今後の北京市の水に係わる方針について林克慶北京市副市長は、「北京市の汚水処理と再生水利用が直面している情勢は依然として厳しい。汚水処理施設の建設が都市の発展よりも遅れている。我々は3年かけて4種類の工事を完成させ、首都の水環境の根本的な好転を実現する。3年後には、北京市全体の汚水処理能力を一日当たり398万立法メートルから626万立法メートルに引き上げる。汚水処理率は83%から90%に引き上げる。汚水が処理されずにそのまま河川に流入する現象は効果的に抑制される」と語っている。
【関連URL】
「汚水処理及び再生水利用施設建設の3年行動計画(2013~2015年)」(京政発[2013]14号)は下記URLにて閲覧可能である(中国語)。
http://govfile.beijing.gov.cn/Govfile/ShowNewPageServlet?id=6097
前回のEWBJ45号では、中国の紡績産業に対する4つの水質汚染物排出基準が新たに公布されたことを紹介した。そして、今回は北京市での水質汚染物排出標準の策定に関する動向を取り上げた。中国国内の水質汚染は深刻な問題であるため、今後も様々な産業分野および各地域で同様の動きが予測される。
このような環境規制の強化や新基準の制定は、排水処理を手掛ける企業にとって新たなビジネス・チャンスにも繋がるだろう。実際に、水処理化学品を扱っているフィンランドのKemira社のCEOは、これら環境規制が化学品市場の拡大に寄与すると述べている(これについては、EWBJ46号「Kemira、石油・ガス分野での化学品事業を強化することを発表」を参照)。
* 北京市では、北京市住民が収める水道料金の中に汚水処理費という項目があり、1トン当たり0.9元(約14円)とされている。なおこれは全国の大・中規模都市の平均値より高い。また、再生水の価格は1トン当たり1元(約16円)である。