タンザニアのアルーシャで2013年4月15日から19日にかけて、“事業規制機関のためのアフリカン・フォーラム(AFUR:African Forum for Utility Regulators)”の第10回年次会合および総会が開催された。この会合では、アフリカ地域の水インフラが抱える課題について官民パートナーシップ(PPP)の果たす役割等が議題に上ったが、その収益率の低さなどから民間セクターからの投資は避けられる傾向が続くだろうとの指摘がなされた。同会合に出席したタンザニア水資源省のJumanne Maghembe大臣は、投資の回収に時間がかかり、収益性も確保できないといった要因から、問題は悪化しているとの見解を示している。
Maghembe大臣は“PPPは、依然としてアフリカ地域で水資源と衛生環境に取り組むうえでの適切なモデルである”としている。更にMaghembe大臣は、ミレニアム開発目標(MDGs)を達成する上で水関連部門は鍵となるものだとしつつ、莫大な資金を要するため投資条件はかなり厳しいと指摘している。Maghembe大臣によれば、“莫大な資金、収益率の低さ、回収期間が長期にわたること、投資のキャッシュ・フローに対する保証の欠如といった要因が、水関連部門から投資家を遠ざけている”という。
また、Maghembe大臣によれば、タンザニアでは2009年からPPPに関する政策を整備してきてはいるが、アフリカ地域の多くの国と同様に水関連部門はいまだ国の管轄だという。
同会合においてタンザニアのMohamed Gharib Bilal副大統領は、アフリカ地域の水道施設の多くが運営面で課題を抱えていると指摘した。Bilal副大統領によれば、そうした課題には、不適切な修理やメンテナンス、利用者への不正確な請求、低い水道料金回収率と無収水(Non-Revenue Water)の割合の高さといったことが挙げられるという。また、水道利用者が負担する料金はコストを反映しておらず、水資源を効率的に利用するようなインセンティブにはつながっていない。
Bilal副大統領は、資本集約的なプロジェクトへの投資を呼び込むためには、よりよい環境が必要だとしている。副大統領は、民間セクターを主に動機付けるのは、許容できるリスクの範囲内での投資による収益であり、持続可能で妥当なリターンを確約するような環境が不可欠だと指摘している。なおタンザニアでは、投資を呼び込み、手頃な価格のサービスと品質を確保するといった目的の下、1980年代初めからインフラ部門で様々な改革を実施してきたが、具体的な措置がとられたのはほんの10年ほど前のことだという。
EnviXコメント
途上国における水インフラのPPPについては、2009年に世界銀行が公表したPublic-Private Partnerships for Urban Water Utilities: A Review of Experiences in Developing Countriesで詳細に論じられている。この報告書は、1990年~2007年に実施された計65を超える水道事業のPPPプロジェクトを検証したもので、主に次の4項目を分析している。
- 給水普及率
- 給水サービスのレベル
- 経営効率
- 無収水
報告書では、民間業者を活用した「経営効率の改善」と「給水サービスの向上」がPPPにおいて特に注力すべきことであると述べられている。民間の介入により事業の経営効率を上げることでキャッシュ・フローを増加させ、それにより投資を拡大させることで給水サービスのレベルを上げる。こうすることで市民の信頼を得て、料金の回収率が上がると考えられる。
アフリカ全体の水道普及率は依然として低いが、投資リスクが大きいとなると民間の参入が滞ってしまう。PPPの成功と失敗を分ける要因は何であるか?過去の事例を精査しそれを明らかにすることで、リスクを低減できるだろう。