EUで1998年に公布された飲料水指令(98/83/EC)の見直しが検討されている。英国のクランフィールド大学の研究チームが2013年4月16日に発表した論文によると、2009年の農薬規則など、指令が公布された1998年以降に実施された規制によって農薬によるリスクに関する不確実性は減少しているという。
指令が制定された1998年当時、EUは予防原則を適用し、不確実性に対応しようとした。そのため、EUでは農薬の上限濃度値として計測可能な最低レベルである0.1μg/lというきわめて低い基準値が採用されている。それに対し、世界保健機関(WHO)、米国、そしてオーストラリアでは、0.1μg/lよりもかなり高く基準値が設定されている。「いかなる農薬の活性物質への曝露によって生じる人体への影響に関する不確実性の総量という仮定はもはや成り立たない。その仮定に基づいて設定された基準値は、予防原則にも合致していない」と研究チームは論じている。飲料水指令の基準値は緩和することができるという研究成果が示されたものの、著者らは基準値のいかなる変更も推奨はしていない。
同研究チームはまた、毒物の混合など、いくつかの不確実性が存在するとして、同指令の強化の余地を示唆した。飲料水指令は5年ごとに見直しが実施されており、2014年に改正される可能性が高い。前回の見直しでは、農薬を含む物質の最大濃度値に関する附属書Iの改定は必要ないと判断されている。共同研究センター(JRC)が率いる科学チームは2012年に水質モニタリングおよびその手法に関する附属書IIおよびIIIを改定するための協議を開始した。JRCによると、附属書IIIの変更についての協議は最終段階であり、附属書IIについても2013年末までに採択される可能性が高いという。次回のJRCの会合は2013年秋に予定されている。
URL:クランフィールド大学による研究論文
http://pubs.acs.org/doi/abs/10.1021/es304955g