タイでは、6年前に水資源法案が第3読会で議論されて以来、当該法案が置き去りにされていたが、このほど、同法案が見直され、再度議論されている。天然資源環境省が策定した本法案が制定されれば、水質汚染物質排出違反者には最大で10年間の懲役刑および100万バーツ(約350万円)の罰金が科されることになる。6年前には、水使用量の値上げや水質汚染費用の徴収などを懸念した水消費者の反対により、議論が棚上げとなっていた。
天然資源環境省は、同法案に対する意見を市民から募るとともに、法案の見直し作業をタマサート大学法学研究科に依頼しており、同大学によると、中小事業者は追加の費用負担を免除されるという。一方で、一般家庭に対する廃水処理システム導入が義務化されるか否かについては、未だ詳細が明らかになっていない。また、新たな“水資源省”の設立についても、議論されているところである。本件について、環境天然資源省は、「我々は、現在の水資源状況や干ばつ、洪水、水をめぐる争い等の諸問題が本法案により改善されることを願っている。また市民が積極的に議論に参加する事も求めている」と語り、2013年内に法案を内閣に提出できるだろうとの見通しを明かしている。また同省は、他の政府当局、市民、水資源•洪水管理委員会を含むすべてのステークホルダーからの意見に耳を傾ける姿勢を示している。チェンライやラヨーン等のいくつかの都市では、本法案に関するフォーラムが開催される予定である。
天然資源環境省水資源局の幹部によると、同国には未だ水資源管理に関する包括的な法的枠組みが存在しない。同幹部は、「水資源に関する法令はいくつもあるが、問題はそれぞれの法令がそれぞれの当局によって管轄されていることだ。そのために、我が国も水資源管理は一貫性を欠いている」と語っている。また、同法案によって地域住民が水資源を管理する委員会に参画できるようになる点を強調するとともに、灌漑目的に水を利用する農民に負担を生じさせないとも語っている。