米国イリノイ州がシェールガス開発を安定産業化するための水圧破砕規制法を施行

2013年6月17日、米国イリノイ州のPat Quinn知事が水圧破砕規制法に署名して同法を発効させた。米国内で大量の埋蔵量が確認されて海外原油への依存度を減らす切り札になると期待されながら、水圧破砕法という採取方法が原因で環境破壊や人体への健康被害を及ぼすことが懸念されていたシェールガスの開発について、一定の規制を設けることによって住民や環境保護団体の安心を得ながら、シェールガスの開発を進めやすくすることにより、このガスの埋蔵量が確認されているイリノイ州南部で大量の雇用の創出を可能にしようとする法律。Quinn知事は、今年の年頭からこの法律の成立を自らの州政の最優先課題のひとつに挙げていた。

シェールガスの採取方法として取り入れられている水圧破砕法には、次のような問題が指摘されている。

  • 地中深く坑井を掘り、そこに化学物質を含む大量の水を高圧で流し込んで人工的に割れ目を作って封じ込められているガスを採取するため、化学物質が地中に堆積し、周辺の飲用地下水中に漏れ出す可能性がある。
  • 砂などを混ぜた支持剤を割れ目に圧入し、割れ目が自然に閉じようとするのを防ぐため、破砕後に地表に戻す使用後の水が高濃度で汚染されていて環境被害をもたらす可能性がある。

こうした点に対して、今回の水圧破砕規制法は以下のように対応している。

  • 水圧破砕業者に対して、破砕前と破砕後に州に対して使用した化学物質の情報を開示することを義務づける。
  • 水圧破砕業者に対して、破砕前と破砕が終了してから6カ月後、18カ月後、30カ月後に水質検査を行うことを義務づけ、発生した廃水もこれまでのように坑井ではなく、地上の閉じたタンクの中に貯蔵することを義務づける。

また、パブリックコメント、公聴会などによる住民参加の機会を増やし、州が業者からの申請に対して意思決定を行うときには、そのような機会に寄せられた住民の意見を重視することも求めている。

米国では、2000年代に入ってからシェールガスの存在が注目され、あちこちで掘削採取が始まったが、規制はまだほとんど行われておらず、Quinn知事は今回の法律が「全米初」で「全米で最も厳しい」点を強調しており、水圧破砕業者、住民、環境保護団体、雇用を求める労働者の誰にとってもハッピーなものになったとしており、現に環境保護団体などからは称賛の声が上がっている。

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