米カリフォルニア州・サンタポーラ市は官民パートナーシップ(PPP)式を採用することで大幅な下水処理コストの削減に成功したと、2013年8月21日に現地メディアが報じた。同市は、2007年、当時の基準に適合していなかった下水処理プラントを廃止し、新設の水リサイクル施設に切り替えることにした。この事業は、住民投票の結果をもとに、PPP方式で進められた。市はSanta Paula Water, LLCと契約を結び、Santa Paula Waterは、新設する水リサイクル施設の設計・施工・運営をPERC Water Corporationに委託した。
設計・施工分離発注に比べて大幅なコストダウン
市は当初、設計・施工分離発注方式を検討していたが、PPP方式を採用したことで、15%のコスト削減を実現することができた。設計・施工分離発注をやめてPPPにしたことによる効果は以下のとおりである。
- 建設費用を1800万ドル(約18億円)節約
- 年間の経常運営費用を180万ドル(約1億8000万円)節約
- 設計処理能力が25%増大
- 施設の占有面積が70%縮小
- エネルギー消費量を30%削減
サンタポーラ市がPPP契約を結んだ当時の市長で、現在は同市の市議会議員であるBob Gonzales氏はこう述べている。「この事業を遂行するための費用は、われわれにとってはかなりの額だった。新しい下水処理施設をつくならければならなかったが、それに必要な資金がなかった。DBOF(設計・施工・運営・資金調達)方式を採用することで、市にかなりの余裕ができ、リスクは委託先の会社に負ってもらえることになった」
工期の短縮と、将来の需要にも備える余裕
新設の水リサイクル施設は、予定よりも6ヵ月早く完成し、2010年5月に操業を開始した。PPP方式の採用を決めてからまる3年もかからなかったことになる。それから3年のあいだ、サンタポーラ水リサイクル施設は予定の運営予算を下回る費用で安定的に稼働し、最低保証水準を大幅に上回る水質の水をつくりつづけている。
現在、施設は設計処理能力の50%のレベルで稼動しているが、このことは、同市内に住宅や企業が増えることによる将来の需要増にも、じゅうぶん応える余裕があることを意味している。また、施設で処理された水は、PERC Waterの保証値よりもつねによい水質を保っている。リサイクル水の現在の造水量は年間約2200エーカーフィート(7億ガロン以上)で、この水は再利用することもできる。
PERC Waterは最先端の処理技術を使っており、施設は、リサイクル水の高度な基準を満たしつつ最高の効率で稼働をつづけている。こうした成果をもたらしている水リサイクル施設がすべて、PERC Waterの独自の設計によって1エーカーの面積に収められ、ほとんどの処理が、地下と運転建屋の下でおこなわれるようになっている。
このように、サンタポーラ市は、革新的な技術に投資することによって、市のエコロジカル・フットプリントを小さくすると同時に、安定的で持続可能な予算の節減をなしとげることができた。このサンタポーラ市の水リサイクル施設プロジェクトは、自治体が環境面での責任を回避することなく財政の安定を確保した理想的な例と言える。