アブダビ、遅くとも2018年までに廃水の100%再利用へ

2014年1月15日に現地で報じられたところによると、アブダビ首長国は2018年までにすべての廃水を処理して農業用水などとして再利用することを目指すという。

現在、廃水の再利用率は60%

アブダビ環境庁(EaD)水資源責任者のMohammed Dawoud氏によれば、現状ではアブダビ国内で発生する年間2万8400万m3の下水処理水のうち、60%が再び利用されているが、一方で残りの40%は海へ流され、環境に影響をおよぼすとともに貴重な資源を無駄にしているという。Dawoud氏は、この廃水を100%再利用するといった計画について次のように語った。「アブダビでは、2017年、遅くとも2018年までに、廃水処理水の100%利用を実現することを目指しています。アブダビが現在直面している大きな課題は、既存のインフラを、廃水を処理して再利用するための新たなインフラへと転換することです」

このインフラを実現する方法については、昨年、技術委員から提出された案が現在審議に付されている。この技術委員会のメンバーは、アブダビ下水サービス公社(Abu Dhabi Sewerage Services Company) 、EaD、アブダビ水電力庁、各自治体、アブダビ食品管理庁の代表者らで構成されている。その提案は「インフラが必要な場所、必要なコスト、そしてプロジェクトに関する費用便益分析に」重点をおくものであるとDawoud氏は語る。

2012年から作物の栽培に処理水を利用するパイロットプロジェクトを運用

こうした下水再利用計画については現在、アブダビ下水サービス公社と食品管理庁、EaDが共同でパイロットプロジェクトを運用している。2012年の12月以降、アブダビ市から車で30分のアル・ナーダでは、飼料や果実を栽培するため、農家らは1日合計600万ガロンの廃水処理水を利用してきた。Dawoud氏は、ドバイで開催されたこの問題に関する2日間のカンファレンスにおいて「廃水処理水の利用を開始してからも、彼らは作物の栽培パターンを何ら変更しませんでした」と述べた。この処理水は、本来追加の処理をせずに使用できる安全な水ではあるものの、追加のフィルターを通したのちに農家に供給されるという。

逼迫する地下水、高コストの淡水化に比較して廃水の再生は有望な水資源
また、UAE周辺の農家は作物の栽培のための水を、地下水または脱塩処理で得られた飲料水に依存しているが、環境の専門家はこれらの水源の持続可能性に疑問を呈している。「現在、事態はかなり逼迫しています。過去の5~6年間で地下水の置かれた状況は極めて深刻なものとなってきました。もし複数の地域でこのまま地下水の利用を続けたなら、我々は深刻な問題に直面することでしょう」とDawoud氏は語る。「我々はまた淡水化技術にも依存していますが、これはコストが高い。一方、廃水処理水は比較的廉価であり、品質面も栄養面でも優れています。これらの点から、他の選択肢と比較して有望な資源だといえるでしょう」

廃水処理水を使用するコンセプトは、これまで世界的に見て社会から抵抗感を示されてきたが、このプロジェクトはアル・ナーダの農家たちには歓迎されたという。「この地域の人々は、自らの水資源が逼迫していることを理解しており、そのためにこのコンセプトを受け入れられるのです。アブダビにおける我々の経験から、彼らに対し明示すべき最も重要な点は、その処理水の水質が優れていること、労働者と彼ら自身の健康面に悪影響がないこと、そして彼らの土地には影響がない、土壌の生産性には悪影響がないことだと言えます」とDawoud氏は語った。

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