韓国LG化学は2014年3月中旬、水処理膜のビジネスを強化するために、米国NanoH20社を買収したと発表した。LG化学は、2014年3月14日に理事会を開催し、2億ドル(約204億円)でNanoH2O社の株式100%を買収することを決定した。
米国ロサンゼルスに本社を置くNanoH2Oは、海水淡水化用RO(Reverse Osmosis)膜を生産する企業であり、世界33ヶ国の100以上の現場で取り引きしている。LG化学は、NanoH2Oを買収することにより、同社の水処理ビジネスが短期間で育成できることを期待している。NanoH2O社は独自のRO膜の生産技術を保有しており、LG化学の有する化学素材設計技術、コーティング技術およびマーケティング力を加えることで、市場で一層競争力を確保できるとLG化学は見ている。
淡水化プラントに使用されるRO膜の市場は今後も成長を続けると予測され、2016年には約7億ドル(約714億円)に達するというデータもある(下図)。RO膜市場は現在、米国のDow Chemical、日本の日東電工および東レ株式会社が市場のシェア80%を占めているため、障壁は高い状況である。しかし、今回RO膜の核心技術を確保したことをきっかけに、成長性が高い水処理膜事業を、LG化学の主要事業として育成することに力を入れるという。LG化学のPark Jinsoo副会長は、この買収を行う前に開催された第13期定期株主総会にて、水処理事業に進出するための準備を整ったと説明した。
図淡水化プラントにおけるRO膜に関する設備投資額の推移(2010年~2016年は予測値)
(出典:GWI, Desalination Market 2010)
LGグループは、2011年度に水処理ビジネスをグループの新たな事業として指定したと発表し、韓国市場にて3位の水処理企業であるDAWEOO ENTEC(2010年度の売上は約31億円)を買収した。また、2012年2月には、日本の日立プラントテクノロジー社との合作法人であるLG-Hitachi Water Solutions社を立ち上げるなど、水処理ビジネスに進出を図っていたが、実際米国と日本の会社がほとんどのシェアを占めていたため、成果を出せていなかった。LG化学はこうした状況を逆転させるために、2013年にRO膜技術を持っているWoongjin Chemical社の買収戦に参加したが、東レに敗れてしまった。*
* EWBJ48号に関連記事有り「韓国の東レ尖端素材、ウンジンケミカルを買収――水処理ビジネスにおける国際競争力強化をめざす」