欧州委員会は2014年7月30日、EUでの水の再利用の最適化に向けた政策オプションについて意見公募を開始した。一般市民や利害関係者から11月7日までネット上で広く意見を受け付ける。目的は、人と環境の安全・保全と域内食品通商の自由を保障しつつ、水の再利用を進めるための最適なEUレベルの施策を評価することで、その結果は、水の再利用を行い得る主要分野に関する影響評価の作成時に参考にするという。
欧州委員会の環境総局は、この影響評価を2015年にまとめ、具体的な法案を発表したい意向である。影響評価では、下水処理場や産業施設で適切に処理された水の再利用に重点が置かれ、農業、都市、地下水補填、娯楽(例えばゴルフコースの灌漑)など考え得る全用途が網羅される。意見公募の詳細は下記URL。
http://ec.europa.eu/environment/consultations/water_reuse_en.htm
環境総局は今回の意見公募で、再利用水の安全性に関するEU共通基準を導入する案や水需給の逼迫に直面する国々について目標を設定する案、水関連の現行EU法における再利用の地位を高め、これを促進するための拘束力の無いガイドラインを作る案、農業分野の水再利用の国際基準(2015年に完成予定)を普及させる案など、様々な施策案を示している(これらは2014年春にコンサルティング会社が助言したものに似ている)。
再利用水に関する基準は、既に多くのEU諸国が各々導入しているが、一部は厳し過ぎると見られている。また、再利用水で育てられた農産物の通商に何らかの制限が課される可能性を懸念する声もある。EU共通の基準は、こうした問題の解決に寄与し、水再利用のための許認可発給時の拠り所にもなり得ると、環境総局は意見公募の背景文書(下記URLで閲覧可能)で説明している。共通基準には、単に病原菌や塩分などの物質に関する基準だけでなく、特定事業ごとのリスク管理計画の作成など、より広範な要件も含めなければならないだろう。
http://ec.europa.eu/environment/water/blueprint/pdf/water_reuse/Background_Public%20cons%20_Water%20Reuse_en.pdf
一方、水需給の逼迫に直面する国々については、河川流域管理計画の作成時に再利用の可能性を評価し、目標を適宜、設定するよう義務付ける案がある。
欧州委員会によると、EUは2025年までに年間32億2200万立法メートルの水を再利用できる可能性がある。これは淡水取水量の僅か1.4%相当だが、現在、再利用されている都市廃水の3倍超に当たるという。再利用の余地が大きい国は順にスペイン、イタリア、ブルガリア、トルコ、ドイツ、フランスとされている(下図)。
図 欧州における2025年における再生水量の予測値(上位10か国)