シェール・ガスやタイト・オイルの採掘、深刻な水ストレスに直面

World Resources Institute(WRI)は2014年9月はじめ、Global Shale Gas Development: Water Availability & Business Risk*1(世界のシェール・ガス開発:水の利用可能性とビジネス・リスク)と題する報告書を公表した。この報告書は、世界の大規模シェール埋蔵層において水圧破砕法によるシェール・ガスの開発が進むにつれ、それに携わる企業や関連政府機関が水の利用に関して激しい競争に直面する恐れがあることを指摘している。

この報告書は、商業的な採掘がおこなわれる見込みがありそうな世界中のすべてのシェール・ガスとタイト・オイルの資源について、水の利用可能性を分析した最初の公開文書である。それによると、世界のシェール資源の38%が、水ストレスが「高い」ないし「きわめて高い」状況、または周辺に使える水がまったくない状態に直面するという。

報告書は、大規模なシェール資源のある20ヵ国を水ストレスに関してランク付けしている。これら20カ国のうち40%で、シェール・ガスやタイト・オイルの生産が乾燥状態のなかで、あるいは高い水ストレスのもとでおこなわれるおそれがあると報告書は予想する。

報告書はまた、水圧破砕を実施しているかまたは実施する可能性がきわめて高い11ヵ国――アルジェリア、アルゼンチン、オーストラリア、カナダ、中国、メキシコ、ポーランド、サウジアラビア、南アフリカ、イギリス、およびアメリカ――のすべての採掘事業者について、水の利用可能性を評価している。それによると、水の利用可能性とシェール資源は国によってまちまちで、水圧破砕の実施可能性はほとんど場所ごとに異なっている。

4つの提言と7つの指標

報告書は、政府、企業、およびシビル・ソサエティが水のセキュリティを確保しつつビジネス・リスクを最小化するのに役立つ4つの提言をおこなっている。

  • その地方の水の利用可能性を理解してビジネス・リスクを低減するために、水のリスク評価をおこなう。
  • 透明性を高め、その地方の規制当局、コミュニティ、および産業界と情報を交換して不確実さを最小化する。
  • 水のセキュリティを確かなものとし、規制リスクと風評リスクを低減するために、水のじゅうぶんなガバナンスを確保する。
  • 淡水の使用量を最小化し、水に関する企業のスチュワードシップを推進して水の利用可能性への影響を低減する。

シェール・ガスとタイト・オイルの開発に関して水の利用可能性とそれにともなうビジネス・リスクを評価するのに、報告書は7つの指標――水ストレス、1年のうちの月ごとの水供給量の変動、渇水深刻度、地下水減少速度、最大の水使用者、人口密度、およびシェール埋蔵層――を使用している。

この報告書は、世界の水リスクの評価を地図上にあらわしたものとしては公開されているなかで最も解像度の高いWRIのAqueduct Water Risk Atlasのデータをもとに作成された。この水リスク・アトラスは、企業、投資家、政府機関、その他のユーザーが世界のどこでどのように水リスクと水ビジネスのチャンスが発生しているのかを理解するのに役立つ。

なお、この水リスク・アトラスは以下のURLで閲覧することができる。
http://www.wri.org/our-work/project/aqueduct/aqueduct-atlas

 

*1 以下のURLよりダウンロード可能
http://www.wri.org/sites/default/files/wri14_report_shalegas.pdf

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