米テキサス州とオクラホマ州、シェールオイル・ガス採掘時の廃水管理に関する権限委任を要求

米テキサス州とオクラホマ州は、シェールオイル・ガスの採掘に伴う廃水を独自のプログラム下において規制する許可を連邦政府に要求している。一方この動きは河川への有害化学物質の排出につながるものだとして、環境保護団体は警戒を強めている。

テキサス州とオクラホマ州は廃水管理に関する権限委任を要求

シェールオイル・ガスは、酸や防腐剤、ゲル化剤、摩擦低減剤などの化学物質を添加した高圧水を注入して硬い岩盤(シェール層)を砕き採掘される。この掘削法を水圧破砕法(フラッキング)といい、採掘時に発生するのがフラッキング廃水だ。テキサス州とオクラホマ州は環境保護庁(EPA)に対し、フラッキング廃水の排出管理に関する権限の委任を求めている。共にシェールオイル・ガスの大量生産地である両州は、フラッキング廃水から有害な化学物質を取り除くことで再利用またはリサイクルが可能であると主張している。

オクラホマ州は2018年12月に初めてEPAに対し、フラッキング廃水を産業廃水として規定することを求めた。2019年8月時点では再申請に向け準備中であり、産業廃水として認められれば、EPAの廃水制限ガイドラインとオクラホマ州水資源委員会の水質基準を満たすことで河川等への排出が可能になるという。

環境保護団体は警戒を強める

これらの動きに対し、環境保護団体は反対意見を表明している。廃水管理に関する州への権限委任は、これまで許可されてこなかった活動を認めることと同義だとして警戒を強める。また、州が喧伝するフラッキング廃水の再利用またはリサイクル技術は十分に証明されているものではないと懸念する声もある。米国最大規模の環境保護団体であるシエラクラブによれば、これらの技術により有害な化学物質全てを除去することはできず、また従来から問題視されてきたフラッキング廃水に含まれるラドンやラジウム等の放射性物質への対処としても不十分だという。

EPAは規制緩和の方向へ

両州はEPAに、現在特定環境下のみでしか認められていない廃水の河川への直接排出に関する規制緩和を期待している。連邦政府機関は2019年5月、水質浄化法の下での廃水管理に関する研究草案を公表した[1]。EPAによれば、この研究の完了後、2019年後半には次のステップを発表する計画だという。EPAでテキサス州やオクラホマ州などの中南部地域を統括するKen McQueen氏は、「河川への排出管理に関する州への権限委任は、EPAにとって最前線の政策イニシアチブになるだろう」と述べている。

[1] EWBJ71号に関連記事あり「米EPA、石油・ガス採掘廃水の有効利用に向けた調査報告書草案に対するパグリックコメントを募集開始

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