中国において、土壌汚染問題は大気汚染に続いて、中国環境質改善の重点作業となっている。2015年5月中旬に公表されたところによると、「土十条」(土壌汚染改善の条例10条)と呼ばれる「土壌環境保護および汚染改善行動計画」が、最近、中国環境保護部から国務院に提出され、2015年末あるいは2016年初めにも公表される見込みであるという。
国務院の要求にあわせて、「土十条」には重金属の重度汚染区域、改善への資金投入、改善の具体策などの内容が盛り込まれている。土壌管理・総合改善のための重要な計画として、「土十条」は中国土壌汚染を農業用地および建設用地に分けて管理・保護を行い、土壌汚染改善の責任および任務を地方政府・企業に割り当て、2020年までに土壌質の劣化を抑制するべく努力させる。
さらに、中国政府は一連の奨励策を策定し、土壌汚染改善の分野で社会資本との提携を促進し規範化させ、逐次社会資本を全面的に開放する。その後で社会資本が土壌汚染改善の分野で投資する奨励策の具体策を策定し、これには財政・税収・特恵ローンなどの内容を含む。関係者によれば、「土十条」の実施によって中長期的に5兆7000億元(約122兆6000億円)以上の投資が生まれるものと見込まれている。
「土十条」の策定は中国環境保護部の2015年の重点作業とされている。2005年4月から2013年12月にかけて、中国政府は第一回目の全国土壌汚染状況の調査を行った。その結果、全国20%の耕地は汚染されていることが判明した。具体的にみると、全国における土壌の総基準超過率は16.1%、耕地土壌の基準超過率は19.4%、重汚染企業用地の基準超過率は36.3%、工業廃棄地の基準超過率は34.9%であり、また工業団地・石油採掘地・鉱産採掘地の基準超過率はそれぞれ29.4%、23.6%、33.4%であった。
中国の耕地汚染は非常に深刻な現状にある。単位面積あたりの農薬使用量は世界平均使用量の2.5倍に達しており、また化学肥料、農薬が濫用されるほか、重金属汚染事件も頻発している。2013年、民主党派としての九三学社中央委員会は次のように語っている「全国における耕地の重金属汚染面積は16%以上であり、特に大都市、工業・鉱産区の周辺で汚染状況が深刻である。例えば、広州市の50%の耕地はカドミウム、砒素、水銀などの重金属に汚染され、遼寧省八家子鉛・亜鉛鉱山区の周辺では、耕地の鉛・亜鉛含有量が関連基準を60%超過している」。
中国環境保護自然生態保護司の司長谷慶宝によると、中国政府は土壌汚染改善の法律策定とともに、地方政府・企業が土壌汚染を修復する作業を推進し、商業モデルを利用し合理的な奨励メカニズムや利潤分配モデルを定め、もっと多くの市場主体および社会資本の参与を奨励するべく取り組んでいるという。