飲料水源の汚染監視をリスク・ベースで、より柔軟に行うことを加盟国に認める欧州委員会の指令(下記URLで閲覧可能)が2015年10月28日に発効した。これはEU飲料水指令(98/83/EC)の付属書IIとIIIを改定するもので、順守費用と労力の軽減を意図している。EU諸国は、その実施のための国内法を2017年10月27日までに発効させなければならない。欧州委員会のヴェッラ環境担当委員は“飲料水は公衆衛生と福祉の基本なのでEU全域で高い水準を確保する必要がある。新たな監視規制体制は、不要な分析を減らし、本当に大事な質管理に集中することを可能とする”と述べた。
http://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/TXT/?uri=uriserv:OJ.L_.2015.260.01.0006.01.ENG
欧州委員会のプレスリリースによると、今回の改定は、より公平で包括的で優れた水供給を確保するための法整備を求める市民と欧州議会の声に応じたもので、欧州の約10万カ所の飲料水供給地における水質の監視方法に柔軟性を与え、リスク評価に基づいて、より大切な部分を重点的に監視することを可能にするという。例えば、加盟国はリスク評価の結果、有害物質が見つかるリスクが無いと分かった供給地域では、どの項目(パラメーター)について監視を行うかを決められるようになる。また、供給地域の水のサンプリング頻度を加減したり、公衆衛生上の懸念が生じた場合には監視対象物質リストを拡張したりすることも可能となる。こうした柔軟な監視方法は、食品衛生法で既に使われている“危害分析・重要管理点(HACCP)”の原則と世界保健機関(WHO)の飲料水質ガイドラインに記された水質安全計画方式に則っており、多数の条件が満たされなければ認められないようになっているので、公衆衛生が損なわれることは無いという。なおリスク評価の結果にかかわらず、大腸菌のサンプリング頻度は減らしてはならないとされている。
飲料水指令の第11条は、科学技術の進歩に照らして付属書を定期的にレビューするよう欧州委員会に義務付けているが、欧州委員会が付属書の改定を行ったのは今回が初である。なお欧州委員会は現在、同指令全体の評価も、改正を念頭に実施している。これは市民からの訴えを受けたもので、2015年末までに終わる予定である。