スイス連邦政府は2015年11月4日、下水中の微量物質を確実に除去する浄水工程を、指定下水処理場に追加設置する際の基準を定める水域保全令改正令案を閣議決定した。2016年1月1日付で施行される(以下のリンクに、同改正政令の非公式原文掲載)。
http://www.news.admin.ch/NSBSubscriber/message/attachments/41548.pdf
改正水域保全令のあらましは次のとおりである。
(1) スイスの地表水の微量物質汚染を半分に減らすため、約100カ所の下水処理場にそのような物質を除去する浄水工程を追加的に設置する。おもに、飲料水供給に使われている水域に接している下水処理場に追加設置する。また、大量の下水を運搬する水域に接する下水処理場も対象にする。このようにして、大規模、中規模の河川の水質を目に見えて改善するのがねらいである。同時に、河川から飲料水を取水することの多い川下の欧州諸国にとっても、微量物質汚染が減ることになる。
(2) 新しい浄水設備の設置資金には、住民1人あたり年間0.09スイスフラン(約11円)の排水課徴金による収入をあてる。すべての下水処理場が、排水課徴金を住民から徴収することとする。
(3) もう1つ新しい点として、微量物質除去措置の有効性を検証するため、地表水に達する最も重要な微量物質を対象に、生態毒物学的な要求値を段階的に導入していく。これは、斉一的な方法に基づき、水生生物に対する微量物質の影響を確認するもので、段階的に、限界値として水域保全令に書き込んでいくことにしている。この新たな基準に基づき、スイス各州は、自ら講じた措置の有効性を検証できるだけでなく、微量物質による地表水汚染をおおまかに把握できるようになる。
(4) カルスト地形(石灰岩などの水に溶解しやすい岩石で構成された大地が雨水、地表水、土壌水、地下水などによって侵食されてできた地形)における地下水保全区域の指定を、その地下水導体の性質に即してより適切に行えるようにする。その際、地元の事情をより深く勘案することとし、地下水保全と土地利用の葛藤を和らげる措置を講じる。
(5) 河川敷の活用についても新たに規定する。河川敷における樹園作物(ぶどうやフルーツプラントなど)の存続保証や、河川敷での農道敷設に関するルールを定めた。