米国カリフォルニア州のJerry Brown知事(民主党)は2015年10月8日、マイクロビーズと呼ばれるプラスチック粒子を一定量を超えて含むパーソナルケア製品の州内での販売を2020年から禁止すると定めた下院法案、AB 888を承認し、署名した。これにより、AB 888は法律として成立した。米国では、すでに8つの州がマイクロビーズを含むパーソナルケア製品や市販薬の製造または販売を禁止する法律を制定しているが、そのうちの大半は、規制対象を「非生分解性」のマイクロビーズに限定している。しかし、今回法律として成立したAB 888はこうした制限を設けておらず、生分解性のプラスチック・マイクロビーズも規制対象となるため、産業界から反発の声が上がっている。
AB 888の概要
AB 888によると、プラスチック・マイクロビーズとは、「意図的に加えられた固形のプラスチックの粒子で、すべての面における寸法が5mm以下のもの」をいう。今回成立した新法のもと、カリフォルニア州では、2020年1月1日以降、プラスチック・マイクロビーズを含む歯磨き粉などのパーソナルケア製品を販売したり、販売促進目的で陳列等を行ったりすることは禁止される。AB 888の要件に違反する者は、法律が定める処罰に加え、違反1件につき1日あたり2500ドル(約30万円)以下の民事制裁金を支払わなければならない。ただし、マイクロビーズの含有量(重量)が1ppm未満の製品は、禁止要件の適用が免除される。
生分解性プラスチックの「法の抜け道」ふさぐ
2015年9月現在、米国では、コロラド、コネティカット、イリノイ、インディアナ、メーン、メリーランド、ニュージャージー、およびウィスコンシンの8つの州でマイクロビーズを規制する法律が制定されている(下図)。また、ニューヨーク州の少なくとも1つの郡も、同様の条例を採択している。
図 マイクロビーズを規制する法令が制定されている州
(出典:各種資料よりエンヴィックス作成)
これらの法律の多くは、生分解性プラスチック製のマイクロビーズを禁止の対象から除外している。しかし、生分解性プラスチックのなかには分解されるのに高温の熱を要するものがあり、通常の環境下で実際にそれほどの高温にさらされることがあるのかどうかが疑問視されている。また、そもそも現在、環境に対する安全性が証明された生分解性プラスチックはない、と指摘する声もある。このため、生分解性プラスチック・マイクロビーズの使用を認めることは、一部で「生分解性の(法の)抜け道」と呼ばれ、環境団体などが懸念を示していた。
今回カリフォルニア州で成立した新法について、同州を拠点に活動する非営利野生生物保護組織、Center for Biological Diversityは、「従来のプラスチック・マイクロビーズをさらなるプラスチックで置き換えることを企業に認める『生分解性の抜け道』をふさぐもの」だと述べている。
【関連URL】
AB 888テキスト最新版:
http://www.leginfo.ca.gov/pub/15-16/bill/asm/ab_0851-0900/ab_888_bill_20151008_chaptered.pdf