ドイツ連邦参議院環境委員会は2016年3月18日、連邦政府提出の地表水保全令改正案の審議で、医薬品残留物による河川や飲料水の汚染に対し、医薬品メーカーに経済的負担を求める、次のような勧告*1を決議した。同改正案は2015年12月中旬に閣議決定され、意見を求めてまず参議院に上程されている。政府は参議院の意見を踏まえて改正案を修正し、連邦議会に送付する。
(1) 医薬品やその残留物による地表水汚染の可能性に特別な注意を払うよう、政府に要請する。近年、環境に影響するおそれのある大量の処方薬や薬品作用物質が重大な意味をもってきた。これら物質の水域流入を大幅に削減する措置を早期に講じる必要がある。そこで、医薬品や薬品作用物質に関して、a)利用されている数量、b)環境における挙動、c)毒性、d)下水処理や浄水工程における除去の可能性に関するすべての情報の提出を、生産者と上市者に義務付ける取り組みをEUレベルで進めるよう政府に要請する。
(2) 欧州医薬品庁、欧州化学品庁、EU加盟国から受け取ったデータをもとに、医薬品残留物による水域や土壌の汚染状況に関する報告書を作成するとともに、この観点からEU医薬品法改正の必要性を評価するよう、政府に要請する。
(3) 医薬品の容器包装に、環境の観点から懸念する必要のない医薬品処分方法を記載することを義務付ける取り組みを進めるよう政府に要請する。余った医薬品を指定回収所に引き渡すか、それとも一般廃棄物として水質を汚濁せずに焼却処分できるかのいずれかの方法を、消費者にとって明確にわかりやすく容器梱包に記載しなければならない。
(4) 問題ある物質を水生環境から除去するための経済的責任を、医薬品や薬品作用物質の生産者と上市者に負わせる取り組みを進めるよう政府に要請する。これらの問題物質の水域流入は完全に止めることができないことから、流入量を削減するとともに、流入してしまった問題物質を浄水工程で可能なかぎり除去していく措置を講じなければならない。これらの措置には莫大な費用のかかる可能性がある以上、EU水枠組み指令でいう「原因者負担の原則」に従って、これら物質の生産者と上市者が「拡大製造物責任」の意味における費用を負担することが妥当である。