ペルーで、2016年3月14日、「水資源の責任ある使用と水質の確保を国益と宣言する法案No.5178/2015-CR」が国会に提出された。水資源法で規定されている持続可能の原則に則り、責任ある水の使用を奨励し、用途に応じた水質を保証するアクションをとることを国益と宣言する第1条と、国家水当局ANAは、環境省と協力して水質を保証するアクションをとる措置を優先しなければならないことを規定する第2条のみの短いものであるが、同法案の提案書では以下が説明されている。
ペルーでは最近の人口増加と経済成長に伴い、水の需要が増えているが、人口や工業、また輸出向け農業が集中する海岸地方では、水資源が不足し始めている。FAOの2002年の報告では、ペルーの一人当たりの使用可能な水の量は世界で第17位となっているが、その配分は偏っており、水資源の97.7%が存在する東部のアマゾン地方には、人口の26%しか住んでいない。一方で、人口の70%が居住する太平洋岸の水資源は、わずか1.8%である。残りの0.5%の水資源はチチカカ湖に流れているが、この付近に居住する住民は4%である。なお、ペルーにおける水資源消費の内訳は農業用が80%、家庭用が12%、工業用が6%、鉱山開発が2%となっている(下図)。
図 ペルーにおける水資源消費の内訳
(出典:法案No.5178/2015-CRよりエンヴィックス作成)
1969年に公布された水一般法No.17752では、水資源は国家の資産であると規定されており、水の使用権は、ライセンスや許可によって与えられることになっているが、この正規の手続きをふんでいるのは約10%であり、実際には、水の使用者組合が管理する使用者リストをもとに配分されている。
水一般法では、水の使用の優先順位を、住民用、牧畜用、農業用、エネルギー用、鉱工業用の順に規定している。隣国のチリでは民政に移行してから、鉱山開発と農産物加工産業を中心に経済が発展し、国民の生活水準も向上して、鉱山開発と農業の共存を実現している。また鉱山開発先進国であるカナダやオーストラリア、南アフリカ共和国では、水の再使用などの技術で、環境に優しい開発を実施している。一方ペルーでは、環境に優しいクリーンな鉱山開発をうたう2つの大規模プロジェクトが、水銀による汚染を始めとする環境問題を起こしたのは、まだ記憶に新しいものとなっている。
法案No.5178/2015-CRは、以下のサイトでダウンロード可(西語表記)。
http://www2.congreso.gob.pe/Sicr/TraDocEstProc/Contdoc03_2011.nsf/0/4abe93197c4c5e5405257f76006e2879/$FILE/PL0517820160314.pdf