インドが国民の「生存のための水」を得る権利を保証する法案を含む水関連法案2件を発表

インド水資源省は、2016年5月、水に関連する以下2件の法案を発表した。

(1)  「国家水枠組み法案(National Water Framework Bill)」(以下、「水枠組み法案」)
(2)  「地下水の保全、保護、規制および管理モデル法案(Model Bill for Conservation, Protection, Regulation and Management of Groundwater)」(以下、「地下水法案」)

インドでは、「水」は州の管轄下にある。そのため、水枠組み法案は、本法を適用することを州議会で可決した州に適用する国レベルの法案として、また、地下水法案は各州が定める州法のためのモデル法案として発表された。同省はこれらの法案をパブリックコンサルテーションにかけている。

所得が低い国民にも「生存のための水」を保証する水枠組み法案

「水枠組み法案」は、国民に対し「生存のための水」として最低限の安全な水を得る権利を保証する法案であり、何人も対価を支払えないことを理由に「生存のための水」を得る権利を否定されるべきではないと規定する。水枠組み法案は「生存のための水」の定義を「飲用、調理、入浴、衛生、およびこれらに関連する個人・家庭利用を含む各個人の生命に対する基本的権利」に根源的に必要とされる水と定めている。これには、女性が「特別に必要とする」水、および家畜のために必要となる水も含まれる。最低限必要となる水の量は随時、「適切な」州政府によって随時定められると規定している。

州政府が各々進める水政策の大枠を示す地下水法案

一方で、地下水資源の保全、管理等について規定する「地下水法案」は、水政策に関して「広い国家的コンセンサス」が必要であるとの理念に基づいて作成されたものである。同省は、水に関する政策が州によって多様となることは「避けられない」ものであり、かつ「許容される」ものであるが、その違いは国家的コンセンサスにより一定の幅に収められるべきであると指摘する。今回発表された地下水法案、は水の保全と保存、使用、汚染防止/抑制、価格設定、管理、河川/帯水層の管理を取り扱う、包括的な水のガバナンス構造を構築することを目指したものとなる。地下水法案の主な項目を以下に抜粋する。

  • 州は、あらゆるレベルで水を人々の「公共の信頼」のもとに保持するものとし、「生存のための水」は農業用水、工業用水、商業用水を含むその他のすべての用途に優越する。水資源を保護し、保全し、次の世代に引き継ぐことはあらゆるレベルの州、市民、およびあらゆる部門の水利用者の義務である。
  • 所得が多い消費者に対してはコスト回収分を載せた価格、中所得者には妥当な価格を設定し、低所得者は一部の給水を無料とする「グレード別の価格体系」を導入することを要請する。あるいは、全ての世帯に一定量の水を無料で供給することも考えられる。
  • すべての水の用途に対して「拘束的な」水質基準を導入することを提案する。
  • あらゆる活動/製品を対象として「拘束的な」国内の水フットプリント基準を構築することを提案する。企業は、年間の水フットプリントとともに、それを漸減するためのアクションプランを毎年報告するよう要請されることとなる。
  • 不正使用する意欲を挫くため非常に高い罰金を科すとともに、一定量以上の給水を停止するなどの策を執る。

上述の法案は、以下のURLより閲覧できる。

(1)  「国家水枠組み法案(National Water Framework Bill)」)
http://wrmin.nic.in/writereaddata/Water_Framework_May_2016.pdf

(2)  「地下水の保全、保護、規制および管理モデル法案(Model Bill for Conservation, Protection, Regulation and Management of Groundwater)」)
http://wrmin.nic.in/writereaddata/Model_Bill_Groundwater_May_2016.pdf

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